阿蘇山といえば、迫力ある活火山というイメージが強い。最深部まで車でアクセスできることもあり、非日常の光景を一目見ようという観光客がたくさん集まる。

 ところが、中心部からはずれた外輪山に目を向けると、訪れる人がぐっと少なくなる。加えて、やや引いた位置から阿蘇山の巨大な山容を眺められる「特等席」が多いことにも気が付く。なかでも、ぼくのお気に入りは杵島岳(きじまだけ)と草千里ヶ浜(くさせんりがはま)。夏を終えてなお鮮やかな緑色の草原が山肌を覆う、絶景の山である。

◼️駐車場から小一時間で超絶景!  阿蘇五山のひとつ、杵島岳

水の溜まった草千里ヶ浜と、こんもりとした姿の杵島岳

 はじめて飛行機から眺めた阿蘇山は、言葉にできないほどの大きな山だった。

 最高地点の高岳(たかだけ・標高1,592m)をはじめ、中岳(なかだけ・標高1,506m)、杵島岳(きじまだけ・1,326m)、烏帽子岳(えぼしだけ・1,337m)、根子岳(ねこだけ・標高1,408m)の五つを阿蘇五岳と呼び、ぼくはそれらを一つずつ探しては指先確認をしたことを覚えている。

 よく見ると、五岳のさらに外側を丘陵が取り囲むように広がっている。世界最大級のカルデラという表現がされるほどの山だけれど、いったいどこまでがカルデラの範囲なのかよくわからないくらい大きい。阿蘇山の周辺には神聖なる湧水の名所があり、巨石を祭る神社や霊峰も多数ある。火山の強大なエネルギーは人々に畏怖され、いつしか信仰と結びついた。なんともすごい山である。

広々とした杵島岳の山頂。遮るもののない大展望には、九重連山の雄姿も

 そんな阿蘇山に、これまで何度か登る機会があった。とくに杵島岳は最高。草原に包まれた巨大な丘陵のような山であり、山頂からの眺めは絶景中の絶景だ。それでいて舗装路がメインの登りやすさとくれば、阿蘇山の入門的なフィールドと言って差し支えないと思う。熊本空港からのアクセスのよさ、およそ300台という駐車場(有料)の広さというのも高ポイント。

 登山は、草千里ヶ浜の駐車場からスタートする。レストランやカフェ、お土産屋に並ぶ一般観光客を横目にしながら、ハイカーはいそいそと杵島岳の登山口にとりつく。整備が行き届き、とても歩きやすい道が山頂まで続いている。コースタイムは30分強。歩きやすいとはいえ、急な階段もある。自分のペースで登るべし。