世の中にはダム偏愛マニアなるものが存在するのをご存じだろうか。いったいダムの何がおもしろいのか。ダム初心者である筆者が、ダムマニアならではの楽しみ方や、見どころポイントなどを調べてみたので解説する。

 また今回は筆者の住む東北岩手のダムを実際に訪問し、ダムカレーを味わってきた。まさしく五感をフルに使ってダムを味わい尽くす旅である。

■ダムマニアとは

ダム自体の規模やデザインを実際に鑑賞し、胸を熱くする人々こそがダムマニア

 ダムマニアとはダムを愛好し、ダム上部や上から下からの眺めを楽しむだけではなく、その規模やデザインなどに魅力を見出す人々を指す。巨大建築物愛好者にも通じるものがあるが、ダムだけではなく、ダム湖や周辺の景観にもこだわりがある人もいる。

 現在ダムマニアの正確な人数は把握できていないが、2016年の群馬県のダム点検放流(矢木沢ダム、奈良俣ダム)の際、2,600人の人が集まったという記録がある。

■知れば知るほどダムの世界は深く広い。楽しみ方、鑑賞のお作法

登山やキャンプでは遭遇率の高い、ダムとダム湖。季節ごとに景観が違うのも楽しみ方のひとつ

 国土交通省の2014年データによると全国に2,750基もあるダム。山や谷など、建造された場所の地形に合わせて形が異なり、開発の歴史や景観の遍歴をまとめて観光スポットや資料館として整備されているところもある。大きなダムでは駐車場やトイレにも困らない。さらに、近隣に公園やキャンプ場を擁している場合もある。大迫力の放流イベントも見逃せない。

●ダムの基礎データによる評価と選定

 ダムは大きいほど見ごたえがあるが、ダムの高さを示す堤高、横幅を示す堤頂長、総貯水容量などを指標にするのが初心者向けだ。高さが国内最高峰の黒部ダムは堤高186mを誇り、まさに圧巻。

●すべてのダムは、目的、型式の違いから「顔」が違う

 ダムの魅力を評価する際のポイントはまず大きさだが、同じくらいに外せないのが外観、つまりダムの「顔」のデザインだ。一言でダムといっても、その目的と建設型式はさまざまで、それがダムの顔の違いとなる。代表的なダムの目的といえば、洪水対策や発電などが思いつくのだが、その違いを知って自分好みの「推しのダム」を見つけ、じっくり堪能してこそ、真のダムマニアといえる。

 またダムの建設型式は大雑把に、フィルダムとコンクリートダムに分類できる。前者は岩石や土を積み上げる、土手のような原始的なつくり方で、後者は名前の通り大部分がコンクリートでできている。多くの人が思い浮かべるであろうアーチ型ダムは、コンクリートダムの代表的な型式だ。

 ここからさらに細かく分類できるうえに、これらを組み合わせた複合タイプもある。筆者は個人的に「重力式ダム」という型式は、何だか名前がカッコいいと思っている。

●ダムカードのコレクション

訪問したダムのダムカードコレクション。右側3枚は発電所カード

 ダムカードをご存じだろうか。トレーディングカードと同じサイズのカードで、表面にダムの写真、目的と型式を表す記号、裏面に基礎データや豆知識などが記載されている。

右上の記号:ダムの目的
F 洪水調節
N 流水の正常な維持
A かんがい用水
W 水道用水 
I  工業用水
P 発電
U 渇水対策

右下の記号:ダムの型式
G      重力式コンクリートダム
HG 中空重力式コンクリートダム
A    アーチ式コンクリートダム
GA 重力式アーチダム
E   アースダム
R   ロックフィルダム
GF 重力式・ロックフィル複合ダム

 ダム管理事務所などで無料で配付されており、これだけで基本的な情報を知ることができる。ダムに行ってきた証にもなり、これがコレクター欲をくすぐるので、収集するマニアも多い。

 基本的に国土交通省と水資源機構が管理するダムで公式なダムカードを発行しているが、地方自治体が管理するダムでも独自に発行している場合があり、おまけに周年記念カードのような特別発行されるものもあるので、現在全国で何種類あるのか、初心者が正確に把握するのは困難だ。

 他に、発電に利用されているダムには「発電所カード」なるものも存在し、少しややこしい。ダムカードに記載されている堤高などの数値データなどを使って、カードバトルゲームに転化できるのでは? と思ったが、驚くべきことに、すでに存在していた。