■東北・岩手のおすすめ:堤高上位ダム3選

 先ほどの国土交通省データによれば、筆者の住む岩手県のダムは53基あるのだが、このうち筆者おすすめの3基について、その特徴と見どころなどを紹介する。

 個人的な好みになるが、堤高と呼ばれるダムの高さを基準にして選定している。

●胆沢ダム

下から見上げた胆沢ダム。岩手県内でいちばん高さがある

 岩手県のおすすめトップは胆沢ダムで決まりだ。奥州市の西側の山奥にあり、堤高127m、堤頂長723mの大きさを誇る。下から見上げるとその巨大さがわかる。型式は中央コア式ロックフィル型で、上から見ると案外傾斜がなだらかだが、これはフィルダムの特徴といえる。

胆沢ダムを上から見下ろすと、下は雄大な大地が広がり、ダム側面はなだらかな傾斜になっている

 ロックフィルというだけあって、近くで見ると無数の岩石が組み合わされてダムが形成されている。ダム湖と反対の方角を見下ろすと雄大な大地が広がっており、ダムと合わせて見ごたえがある。越流部と呼ばれる大きな放流ルートもある。

胆沢ダムの越流部を見下ろす。巨大な放流ルートだ

●【MAP】胆沢ダム

●湯田ダム

見下ろすと巨大な半すり鉢状で吸い込まれそうな湯田ダム

 堤高89.5m、堤頂長264.9mを誇る湯田ダムは、国内に10基しかない珍しい重力式アーチ型だ。北上市から秋田県に向かう途中の西和賀町にあり、11年という歳月をかけて完成している。上から覗き込むと巨大な半すり鉢状で、高さも相まって、吸い込まれるような錯覚を覚える。

 湯田ダムによって形成されたダム湖は、錦秋湖(きんしゅうこ)と名付けられている。水の量が減ると底から大地が姿を現し、逆に水量が増えると突端だけ残る“水没林”ができ、湖面に木々が浮かんだように顔を出す、幻想的な光景が広がる。 

 錦秋湖上にはもう一つ、土砂の流入を防ぐための貯砂ダムが設けられており、こちらは錦秋湖大滝と呼ばれている。一定期間、滝の裏側にあたる通路を一般公開したり、夜間にライトアップすることもある。通路は水しぶきが激しいが、夏の間は涼しい空間となる。

貯砂ダムである錦秋湖大滝の裏側の通路。水しぶきが激しい

●【MAP】湯田ダム

●田瀬ダム

ダム湖対岸より眺めた田瀬ダム

 花巻市東和町にある田瀬ダムは、猿ヶ石川をせき止めた重力式コンクリートダムで、堤高81.5m、堤頂長320m。魅力は無骨でいかつい、要塞のごとき面構えだ。

田瀬ダムの外観はまるで無骨な要塞

 ここも大きいダムであるが、歴史は長く、実は国の直轄ダムとしては第1号であり、昭和16年に着工し、戦中・戦後を乗り越えて完成している。ダムの上面は県道178号の一部であり、車で走り抜けることができる。また、ダム湖の周辺には釣りが楽しめる田瀬釣り公園や田瀬湖オートキャンプ場もある。

田瀬ダムの湖側。近くで見ると一層いかつい

●【MAP】田瀬ダム