山梨県大月市と甲州市にまたがる滝子山(たきごやま・標高1,620m) は、「山梨百名山」および「秀麗富嶽十二景」のひとつに数えられる人気の山だ。

 富士山を間近に望む展望と、駅から登山口まで徒歩でアクセス可能な点が大きな魅力。中央本線・笹子駅を起点とし、隣駅の初狩駅へと下山する登山ルートは、公共交通機関だけで完結できるため、車を持たないハイカーにも親しまれている。

 山頂からは富士山はもちろん、南アルプスや八ヶ岳、奥秩父の山並みまで一望できる。澄んだ秋の空気に包まれると、その景観は一層ダイナミックだ。

 登山道はよく整備されており、危険箇所は少なめながら、約1,100mの標高差を持つため登り応えは十分。行動時間で6時間以上かかる、中級者向けの山といえる。特に山頂直下の岩場の急登は体力を試される場面だが、その先に待つ富士の絶景は言葉を失う美しさだ。

 静かな自然林、豊かな植生と水の流れ、そして達成感ある登山体験を一度に楽しめる滝子山。秋の花が咲き、徐々に紅葉に包まれる季節は特におすすめだ。

■駅スタート&ゴールOKの山梨百名山「滝子山」登山コース

駅と駅を結んで歩ける「滝子山」登山のコースだ(国土地理院地図より引用)

●滝子山登山口へのアクセス

 滝子山登山は、JR中央本線・笹子駅が起点となる。新宿駅から笹子駅までは、特急利用で約1時間30分、普通列車でも2時間強でアクセス可能。

 駅を出て高速道路と平行して走る車道を進むと、右折を指示する看板が現れる。そこからさらに進めば登山口だ。駅からおよそ30分で到着する。

 一方、マイカー利用の場合は国道20号線(甲州街道)を経由し、滝子山登山口付近の「道証地蔵(どうしょうじぞう)」周辺にある路肩の簡易駐車スペースを利用できる。ただし台数が限られるうえに、登りと下りが同じコースをたどることになってしまう。やはり、電車利用のほうがおすすめだ。

●標準コースタイム

【笹子駅から滝子山登頂、初狩駅下山コース】所要時間
笹子駅 (0:00)→ 滝子山登山口 (0:30)→ 大谷ヶ丸分岐(2:00)→ 滝子山山頂(3:40)→ 藤沢川分岐(5:30)→ 初狩駅 (6:30)
歩行距離:約11.6km
累積標高差:登り 1,116m、下り1,256m
合計所要時間:6時間30分

■美しい山容と富士山の絶景が楽しめる山梨百名山・滝子山

迫力ある御坂山地と三ツ峠。その先にそびえる富士山のシルエットが美しい

●笹子駅から舗装路を通り登山口へ

 笹子駅を出発し、線路沿いの静かな舗装路を進む。田園風景と里山の趣に溢れた景色が広がり、色とりどりの花を楽しみながら歩くことができる。

 「滝子山」と書かれた案内板に沿って約30分ほど歩くと登山口に到着する。迷う心配はないが、歩道は狭い場所もあるため、車の往来には注意してほしい。

 民家が点在する集落を抜けるため、静かに歩くマナーも大切だ。

 ここから徐々に標高を上げていき、遠くに滝子山の堂々たる姿が見え始める。

笹子駅から車道を歩く。ところどころに立つ看板が登山口へと誘ってくれる。

●杉林を進み、休憩ポイント「大谷ヶ丸分岐」へ

 登山口からしばらくは杉林の中を進み、ほどよい傾斜の登山道が続く。整備の行き届いた道だが、朝露や落ち葉で滑りやすくなる箇所もあるため、特に歩き始めは慎重な足運びを心がけよう。コースタイムは長いが、20〜30分ごとに休憩可能なスペースが点在し、水分補給やペース調整がしやすい点はありがたい。

 ところどころ視界が開け、深い緑の山々と、わずかな紅葉が疲れを癒やしてくれる。

 歩き始めてから約2時間で、平坦な岩場が広がる「大谷ヶ丸分岐」がある。ここから先は本格的な登り道となるため、しっかり休んで準備を整えよう。