せっかくの連休ですが、物価高の影響で遠出を控えている方も多いようです。しかし、山登りに限って言えば、悪いことばかりではありません。5月の頭は、首都圏近郊の中低山に新緑が芽吹き、花々が咲き始めるベストシーズンなのです。

 中でも、渋滞を気にせず電車で手軽に登れる大月市の「岩殿山」は、たくさんの見どころを内包した名低山です。実際に歩いてみた最近の状況と共に、その魅力を紹介します。

■低山とは思えないほどの眺望

大月駅からすぐそこに見えます

 岩殿山は、山梨県大月市にあります。標高は634m(スカイツリーと同じ!)と高くありませんが、その名の通り、巨大な一枚岩で構成された大迫力のビジュアルが特徴です。JR中央本線や中央道を走っていると、車窓からも姿が見えるので、なんとなく記憶にある方も多いのではないでしょうか。

標高に似合わぬ大展望

 この山が人気の理由は、そのビジュアルに加え、駅から手軽にアプローチできること。さらに、山頂から望む抜群の眺望にあります。巨大な岩峰なので、この標高でも山頂一体に視界を遮る木々が薄く、非常に見晴らしが良いのです。秀麗富嶽十二景のひとつにも選ばれた富士山の眺望は、なかなかのものです。

■連休前後は春の花が豊富

山頂直下の広場に咲く八重桜

 連休前後は春の花々が楽しめる時期でもあります。4月末に登った時には、山頂直下の広場で八重桜がまだまだ楽しめました。道中の足元には、イカリソウやフデリンドウが見られました。カタクリの株も見つけましたが、花はもう終わってしまったようです。5月に入ると、山ツツジやサツキが見ごろを迎えます。

自然の岩を利用した城門。これを攻め落とすのは大変そう

 また、戦国時代好きにとっては、武田氏の滅亡に関与した山城としても知られています。自然の岩山の形状を利用した非常に堅牢な山城だったそうです。

■現在、最短ルートは閉鎖中

南斜面を登るルートは閉鎖中

 大岩のある南斜面によく整備された登山道があるのですが、2019年以降、崩落の危険があるため通行止めとなっています。東面にある岩殿登山口も同様に、山頂までは登れません。

 そこで今回は、残る北面の畑倉登山口にぐるっと回り込んで、城を攻めることにしました。うぉー。

鬼の岩屋。雨の後は降り注ぐ水量が増すそう

 登り始めてすぐ、鬼の岩屋への分岐があります。これは水が降り注ぐ巨大な岩室で、大月市に残る桃太郎伝説によれば、鬼の棲家とされていた場所です。登山中に現れるこうした寄り道スポットはいまいちなことが多いのですが、ここはかなりの迫力なので、ぜひ立ち寄ることをおすすめします。

長くはないけれど、なかなかしんどい登りが続く

 ここから先は、山頂までひたすらスイッチバックを繰り返しながらの急坂が続きます。時折、木々の隙間からお隣の百蔵山の姿が見えますが、展望はあまりありません。1時間弱ほどと短いルートとはいえ、足元が滑りやすい道なので、油断せずに登山用のシューズを履いてくることをおすすめします。