今年は山小屋が続々とドローンによる荷上げを導入し始め、山岳物流の新しいインフラになるか、注目が集まっています。
特に八ヶ岳では、数年前から取り組む黒百合ヒュッテをはじめ、今年の8月に蓼科山荘や赤岳鉱泉、行者小屋が物流用ドローンを導入。蓼科山頂ヒュッテでも、10月からドローンでの荷上げをスタートしました。
まるで、映画の世界が現実になったかのような山の物流事情について、輸送業務を請け負う業者の1つで、山小屋の荷上げだけを専門に扱う会社「ローカルビデオショップ」代表・佐藤豊さんにお話を伺いました。
◼️1度にMAXで30kgほどの荷物を運べる
佐藤さんがドローンでの物資輸送事業に取り組み始めたのは、黒百合ヒュッテのオーナー、米川岳樹さんから「空撮ではなく、山小屋に物資を運べないか?」と相談を受けたことがきっかけでした。
もともと、山の映像を撮りながら「山で仕事をしたい」と模索していた佐藤さん。映像制作で思うように成果を出せず思い悩んでいた彼にとって、ドローンで山小屋に荷上げをするという仕事は、まさに渡りに船でした。
「“山で働く”という自分の目標を、具体的に実現できる道がパッと開けた気がしました」
佐藤さんが使うドローンは、荷物を積みやすいように工夫した産業用機種です。
一度にMAXで30kgほどの荷物が運べますが、運用時は安全面のマージンをみて20kg前後に荷物をまとめます。飛行時間は最大10分、500mほどの高低差をカバーできるそう。数時間かけて、1日に300kgほど飛ばした実績もあります。
「安全性や保守体制を優先するため、大幅な改造は行っていません。ただし、山小屋輸送用として荷物の固定方法やカーゴボックスは独自に工夫して、重量物でも安定して運べるようにしています」
ヘリでの荷上げと比べると、少量でも飛ばしやすいこと、天候の合間で飛ばせるので空輸の機会が取りやすいことは、大きなメリットになります。