◼️もっとも難しいのは、気象条件と電波環境

現在、MAXの積載量は30kgほど

 一方、山ならではの難しさもあります。

 例えば、山域ごとにある自然公園法や航空法に基づく規制。毎回、環境省や自治体と調整のうえで飛ばす必要があります。飛行ルートは、安全を優先して登山道や人がいるエリアを避け、飛行時間は登山者が少ない時間帯に設定するなど、さまざまな配慮をしています。積荷についても、ガソリンや灯油など危険物は慎重に扱い、耐衝撃性のある梱包や漏れ防止を徹底しなければなりません。

飛行可否の判断はかなりシビア

 もっとも難しいのは、気象条件と電波環境だと言います。

 「山岳は風の乱れや急な天候変化が多く、飛行可否の判断がシビアです。また、山間部では電波遮蔽が起きやすく、安定した操縦のために事前調査が欠かせません。加えて、バッテリー管理も重要で、低温環境での性能低下に対応する工夫をしています」

 また、バッテリー容量の問題で、まだ山深い山域では導入できない状況です。

◼️山小屋を変える可能性も秘めている

輸送中のドローンからの景色は、まるで鳥の視界のよう

 しかし、近い将来、ドローンがヘリや歩荷と並ぶ荷上げ手段の1つになり得ることは明白です。来年度、佐藤さんはこれまでテストを繰り返してきた八ヶ岳以外の山域でも、ドローンによる物流事業を展開する予定があるそうです。

 ドローンの進化や法規制の進展により、今後は建材やガスボンベなどの重量物を飛ばすこともできるようになるでしょう。山小屋としては、少量の輸送がいつでもできれば、生鮮食料品やクリーニングなどを導入しやすくなります。つまり、ドローンは従来の山小屋のサービスを根本から変える可能性も秘めているのです。

 山岳物流の新しいインフラの動向から目が離せません。