■8月下旬、数十年ぶりに挑戦! 思川で味わう流し毛ばりの釣り

当日は午前7時前に釣りを開始した。竿は4.5mの清流竿に市販の「流し毛ばり用セット仕掛け」を結んだ。狙ったのは水深が膝下程度で白波が立つ瀬。夏から秋にかけての定番ポイントで、水温が上がりにくく酸素量も豊富で、上流からエサも流れ込むためオイカワが群れやすい。
仕掛けを上流に静かに投げ入れ、竿を操作して扇状に流す。下流に流し切ったところで「パシャ」と水面が弾け、最初のアタリが訪れた。「クンクンクン」と心地よい引きが手元に伝わり、銀白色のオイカワが姿を見せる。一投目から本命が掛かり幸先の良いスタート。しかしその後は続かず、数m移動すれば釣れるものの安定せず、上流へ小刻みに移動して拾い釣りを繰り返す展開となった。

周囲にはユスリカやカゲロウの姿が少なく、魚が水面を意識していないのかライズもほとんど見られない。近年の酷暑で「蚊やセミが減った」という話題を耳にするが、同じ現象が水辺でも起きているのかもしれない。本来なら夕暮れが羽虫の最盛期で、その時間ならもっと多くのオイカワに出会えただろう。今回は釣行の時間帯を誤ったと痛感したが、それでも小さな手応えは途切れず、初心者や子どもなら十分に楽しめる内容だった。
■残暑の里川で出会う「川の宝石」 オイカワに感動

午前10時までの3時間での釣果は、オイカワ17匹、カワムツ6匹。子どもの頃に体験した「鈴なり」の爆釣には及ばず、筆者としてはやや物足りなさを感じた。しかし、これは筆者の期待が大きすぎたためであり、子どもや初心者なら十分満足できる釣果だろう。
特に印象的だったのは、婚姻色をまとったオスのオイカワとの出会いだ。銀白の体に青やオレンジの縞模様が浮かび上がる姿は「川の宝石」と呼ぶにふさわしく、数やサイズ以上に大きな感動を与えてくれた。こうした一尾との出会いこそが、この釣りの醍醐味である。


数十年ぶりに毛ばり釣りを体験し、懐かしさと新鮮さが交錯した時間を過ごした。今回は時間帯を誤ったが、夕暮れに再挑戦すれば、かつてのような鈴なりの光景が再び見られるに違いない。思川のような里川は全国各地にあり、特別な道具も遠出も不要。生きエサに抵抗がある人でも安心して挑戦できるため、初心者やファミリーをはじめ、誰にでもすすめたい残暑のレジャーである。
管轄漁協:栃木県下都賀漁業協同組合 https://www.shimotsuga-fc.org