■興禅寺の静謐な時間
町の中心から坂を上ると現れるのが興禅寺(こうぜんじ)。木曽氏の菩提寺として室町時代に創建された寺院で、本堂奥には庭園「看雲庭(かんうんてい)」が広がる。白砂と苔、石組みだけで構成された庭が由緒正しき日本庭園を彷彿とさせる。
座敷に腰を下ろし、庭を眺めていると、耳に届くのは風の音と鳥の声だけ。忙しい日常の中では感じ取れない時間の流れが、ここにはある。ふと、庭の白砂の模様がゆるやかな川の流れにも見えてくる。
■木曽川と橋の風景
町の背後には、深い谷を流れる木曽川がある。青みを帯びた水が岩をかすめ、白いしぶきをあげながら流れていく。川に架かる橋から見下ろすと、江戸時代の旅人もこの流れを眺めながら休んだのではないかと想像が膨らむ。
川沿いの道を少し歩くと、水車小屋や古い石碑も残っており、近くには小さな祠がひっそりと佇む。観光マップには大きく載らない場所だが、こうした「脇道」にこそ、その町の風情がある。
■歩いて歴史を感じる時間こそが旅の魅力
木曽福島の魅力は、保存された建物や史跡だけではない。歩く速度を落とし、五感を研ぎ澄ますと、硬い石畳、格子越しの光、川の音、人との会話が積み重なり、旅の思い出を豊かにしてくれる。
江戸の旅人も、きっと同じようにこの町を後にしたのだろう。そう考えると、自分が歩いている時間も、長い歴史の中の物語の一部になっているようにさえ思えてくる。木曽福島駅から降りて、石畳を通り、木曽川を渡り、関所や興禅寺を観光し、日本の史跡を辿る3時間程度の散歩となった。
■アクセス情報と地図リンク
・車でのアクセス
東京方面から
中央自動車道「伊那IC」または「塩尻IC」から国道19号経由で約1時間
※伊那ICからは国道361号を経由、塩尻ICからは国道19号を南下
名古屋方面から
中央自動車道「中津川IC」から国道19号経由で約1時間30分
・電車でのアクセス
東京方面から
JR中央本線 特急「あずさ」で塩尻駅へ(約2時間40分)
塩尻駅でJR中央本線・中津川方面行き普通列車または特急「しなの」に乗り換え、木曽福島駅下車(約50分)
名古屋方面から
JR中央本線 特急「しなの」で木曽福島駅へ直通(約1時間40分)
・木曽福島駅から町並みまで徒歩約10分。