日本百名山に憧れはあるけれど、登るにはハードルが高いという方は多いのではないだろうか。しかし、そんな名山を眼前に「眺める」ことができる低山は実はたくさんある。

 日本百名山が29座ある長野県の南信エリアで、日帰りで登山できる低山・里山を長野県在住の筆者が3つ紹介していく。

■霧訪山(きりとうやま) 長野県塩尻市・辰野町

霧訪山山頂からの展望。遠くに北アルプスの山並みと諏訪湖が見える。

 地元の里山好きにおすすめの山を聞くと、必ず出てくるのが「霧訪山(きりとうやま・1,305m)」。

 登山ルートは3つあり、登頂時間が短いコースで1時間15分ほど。日帰りで登れる里山でありながら、360度の大パノラマで北、南、中央アルプスの山々や八ヶ岳など、日本百名山を20座以上見られる眺望のいい山だ。

 実際に登ってみて感じるのは、地元に愛されている山だということ。

 一番勾配のきつい「かっとりコース」は、場所によっては一歩踏み出した足の膝に手を置きたくなるくらい、息のあがる急な階段が続く。暑い日や体が慣れるまでは、ゆっくり無理なく休憩しながら登るのが安心だ。

 しかし、100m登るごとに地元中学生が作った「〇〇m」という標高を示す看板があり、登頂までを励ましてくれる。

 山道もきれいでわかりやすく、地元の方々が整備してくれている様子がうかがえた。

山道を境に左右で木が違うのがわかる。

 また、里山ならではの植生が見られる場所もある。

 山道の一部では左側は自然そのままのさまざまな木々が茂る森、右側は植林されたと見られる杉林が広がっていた。

●【MAP】霧訪山

【登山口へのアクセス】
3コースとも長野自動車道・塩尻ICから約15分~20分
【駐車場】
3か所(各10~20台)
【かっとりコース→霧訪山山頂→新道南沢コース→かっとりコース】所要時間
かっとりコース登山口(0:00) → かっとり城跡 (0:30) → 霧訪山山頂 (1:15) → ブナの分岐 (1:35) → コース分岐(2:40)→かっとりコース登山口(3:00)
歩行距離:約3.9km
累積標高差:登り 535m、下り 535m
合計所要時間:3時間

■高鳥谷山(たかずやさん) 長野県駒ヶ根市・伊那市

高鳥谷山山頂。石碑とベンチが並び、広々としている。木陰もあるので休憩しやすい。

 中央アルプスを一望できることで知られている「高鳥谷山(たかずやさん・1,331m)」。麓の高鳥谷神社から約1時間で登頂することができる。もしくは、山頂近くまで車で行くことも可能だ。

 地元登山者の間では、高山に登る前の肩慣らし、体力作りをする山で、まだ肌寒い春先から登り始める山として話を聞くことが多い。登山道は最初は緩やかだが、山頂手前15分ほどの登りがやや急になっている。季節によっては枝葉が道に落ちているため滑りやすく、注意が必要だ。 

 また駒ヶ根市の東側にあるこの山は、西側に位置する光善寺と位置が対になっていて、宗教としての繋がりはないものの、地元では西の「町寺」、東の「霊山」として語られることがある。お寺や神社好きにもおすすめしたい山である。

 山頂から眺める木曽駒ヶ岳や千畳敷カール、伊那谷や市街の展望はここでしか味わえない最高の絶景だ。

●【MAP】高鳥谷山

【登山口へのアクセス】

【登山口へのアクセス】
・自家用車の場合:中央自動車道・駒ヶ根ICから 11km 約25分
・電車の場合:JR東海飯田線・駒ヶ根駅下車 タクシー 約20分
【駐車場】
20台
【高鳥谷神社山道入り口〜高鳥谷山山頂往復】所要時間
高鳥谷神社山道入り口(0:00) → 高鳥谷神社(0:10)→ 高鳥谷山山頂(1:20)→ 高鳥谷神社(2:30)→ 高鳥谷神社参道入り口(2:40)
歩行距離:約3.0km
累積標高差:登り 442m、下り 442m
合計所要時間:2時間40分

■守屋山(もりやさん) 長野県諏訪市・伊那市

守屋山山頂からの展望。諏訪湖と諏訪の街並みがよく見える。

 東峰、西峰と山頂が2つあり、信州百名山、花の百名山にもランクインしている「守屋山(もりやさん・1,651m)」。360度の展望を誇り、空気が澄んでいる日には日本百名山のうち33座を望める山である。

 登山ルートは3つあるが、さまざまな巨石を見ることができる立石ルートがおすすめだ。山道は森の中をひたすら進んでいくコースで、道や標識が整備されているのでわかりやすく、迷う心配はない。道幅は人が1人通れる程度の場所も多かったため、すれ違いの際などは注意しよう。

 東峰まで約1時間半、最高峰の西峰まで2時間弱で登頂可能だ。

 5月初旬に筆者が登った際には、フジの花に始まり、スミレやサクラソウ、フデリンドウに真っ赤なクサボケなど多様な花々が美しく、山頂からは諏訪湖を見ることができた。景色、植物ともに見どころがたくさんあり、あっという間の時間だった。

守屋山のあちこちで咲いていたフデリンドウ

●【MAP】守屋山

【登山口へのアクセス】

【登山口へのアクセス】
・自家用車の場合:中央自動車道・諏訪ICから約20分
・電車の場合:JR東海飯田線・茅野駅下車 杖突峠まで JRバスまたはタクシーで約20分
※JRバス関東「南アルプスライナー」は7月~9月までの季節運行
【駐車場】
5台
【立石コース登山口→東峰→西峰往復】所要時間
立石コース登山口(0:00)→ 前獄(1:00)→ コース分岐(1:15) → 東峰 (1:20) → 最高峰西峰(1:40)→ 東峰(2:00)→ コース分岐(2:05)→ 前獄(2:20)→ 立石コース登山口(3:20)
歩行距離:約6.0km
累積標高差:登り 658m、下り 656m
合計所要時間:3時間20分

 公共交通機関では少々アクセスしづらいが、どの山も季節を変えて何度も訪れたい、地元ではおすすめの長野県南信エリアの低山・里山だ。南信エリアを訪れた際は、ぜひ一度登ってみてほしい。ただし、夏場は気温が高くなるため、こまめな水分補給や帽子の着用など、熱中症対策を万全にして出かけよう。