日本人なら誰もが「人生で一度は登ってみたい」と思う山、それが富士山だ。筆者も2024年7月中旬に挑戦したのだが、登山装備やルート、気温対策は情報が多く調べやすかった。一方で、紫外線や日焼け対策は具体的な注意点や体験談が少なく、紫外線対策を忘れてしまいがちな登山初心者は苦労するのではと感じた。

 本記事では、筆者が富士登山で失敗した日焼けの苦い経験、そしてこれから登る人に向けた対策を紹介する。夏休みに富士登山を予定している人はもちろん、「いつかは挑戦したい」と思っている人にもぜひ参考にしていただきたい。

■富士山山頂近くの紫外線は地上の4割増?  標高が高いと何が起こるのか

曇りでもガスがかかっていても、紫外線は降り注ぐ

 富士山の山頂(標高3,776m)では、平地に比べて紫外線量が約40%も多いと言われている。これは、標高が1,000m上がるごとに紫外線量がおよそ10〜12%増加する(環境省 紫外線環境保健マニュアル 2020年3月)大気の性質によるものだ。 地上では、太陽から降り注ぐ紫外線の一部は大気中のオゾン層や空気の分子によって吸収・散乱されている。しかし、標高が上がるにつれて空気が薄くなり、紫外線を遮るものが減っていく。結果として、より強い紫外線が届くことになるのだ。

 さらに、曇りの日でも紫外線が通過する点に注意が必要だ。雲が厚くても、紫外線は80〜90%近く透過するとされており、「日差しがない=安心」ではなく、むしろ涼しさを感じるような曇りの日ほど、油断して対策を怠りがちになるのだ。

●曇りだからと油断…… 日焼け対策を怠った富士登山の代償

筆者が登った当日、富士山は一日を通して曇りであった

 筆者が富士山に登ったのは、7月中旬。富士宮口五合目からスタートし、山頂を目指した。当日は一日を通して曇り空で、太陽の姿はほとんど見えず、気温もそれほど高くなかった。むしろ肌寒ささえ感じるほどで、持参した帽子をザックにしまったまま登りはじめた。

 登山中、体感的な異変はほとんどなく、紫外線の強さを感じる場面もなかった。顔には日焼け止め入りの化粧品を使用していたほか、サングラスをかけ、途中で長袖を羽織り、顔や腕はカバーできていたが、首筋は完全に無防備だった。帽子は小雨が降り始めた下山の終盤になってようやくかぶった程度。

 周りの登山者を見ると、長袖・長ズボンに加え、つばの広い帽子をかぶっている人が多く、肌を露出している人はほとんど見かけなかった。半袖・短パン姿の登山者は一部のトレイルランナーに限られていたが、そうした人々も帽子は着用していた。

 登山を終え、車に戻ったときにはじめて、日焼けの痛みに気づいた。首の後ろがヒリヒリと焼けるように痛み、数日で皮膚が剥けるほどのダメージを受けていた。さらに、頭皮もシャンプー時に激しく痛み、皮が剥けてきた。体感的な涼しさに惑わされ、紫外線対策を怠ってしまった結果である。

実際の日焼け写真(富士登山当日の夜)
実際の日焼け写真(富士登山3日後)