■缶詰でも刺身でも水銀量は同じ

食物連鎖による水銀の蓄積

 だが、しかし!

 結論を下す前に、まずは水銀の話をしたい。水銀は、石炭火力発電所やセメント工場などから排出される。また地中深くにも存在していて、火山の噴火などで地表に出てくる。

 その水銀が海や湖に入ると、細菌の働きによって、より毒性の強いメチル水銀に変化する。水中にはプランクトンがいるので、メチル水銀はまずプランクトンの体内に取り込まれる。そのプランクトンを小魚が食べる。その小魚を、もっと大きな魚が食べる。それをさらに大きな魚が食べて……という具合に、食物連鎖の上位にいくほどメチル水銀は体内で濃縮される。例えば、マグロで最上等のクロマグロ(本マグロ)は、食物連鎖の中でトップに君臨している。だから体内のメチル水銀量は小魚よりずっと多いのだが、そういった魚を、我々はあまり意識することなく食べているわけだ。

■結論。普通に食べれば問題なし!

静岡県民が愛する「ツナごはん」。カツオ節を掛けるとさらにウマ味UP!

 結論として、ツナ缶には確かに水銀が含まれている。しかし、それは缶詰だからではなく、原料となる魚が少なからず体内に持っているものだからだ。なので、水銀の摂取を控えるためには、水銀の蓄積量が多い魚を食べる機会自体を減らす必要がある。そのガイドラインは厚労省や自治体などのサイトで確認できるので、興味のある人は見てほしい。

 さて、ここで安心できる話題をひとつ。日本のツナ缶の主な原料になるビンナガマグロ、キハダマグロ、カツオは、クロマグロと比べるとメチル水銀の含有量が比較的少ない。宮城県のサイトによれば、「(ツナ缶は)特には注意が必要でない」と明記してあるし、日本缶詰びん詰レトルト食品協会でも特定の魚種(クロマグロなど)以外のツナ缶は「普通の食事でとる限り、問題にならない」と明記している。

 「普通」という表現は曖昧だけれど、例えば「毎日ツナ缶を24缶食べてます!」とか、そういうことをしないのが普通だと思う(それは食べ過ぎ)。

 ツナ缶には、タンパク質やビタミン・ミネラルなどの栄養素や、不飽和脂肪酸(DHA、EPA)などの体に良い成分が含まれている。適量に摂取すれば、デメリットよりもメリットの方が多いと思うのであります。