■【実践例】何もしなかった最高のキャンプ

 本当に「何もしない」を実現しやすいのは、チェアリングや車中泊、散歩などそれぞれに思い浮かぶものがあるかもしれないが、今回は筆者が実際に試してみた“脱・アクティブキャンプ”の実例をいくつか紹介する。

●焚き火と椅子だけで過ごした夜

焚き火を眺めながら、好きなお酒とともに静かな夜を過ごす(画像提供:吉田 哲大)

 焚き火台を囲んで、ただ炎を眺めていた夜。スマホも音楽も聴かず、道具いじりもせず、ひたすら火のゆらぎに身を任せていた。途中、仲間との会話が途切れても、まったく気まずくない。静寂を心から堪能する。翌朝、心がほぐれているようにさえ感じた。

●朝の空気と鳥の声だけで整った朝

朝、少し早起きをして近くを散策。静けさを堪能しよう(画像提供:ARISA TODA)

 目覚ましをかけずに、テントの外が明るくなった頃に自然と目が覚めた。外に出て、コーヒーも飲まずに30分ほどただ椅子に座る。鳥の声、風の音、肌寒い空気。何もしていないはずなのに、「ああ、今、整ってるな」と思えた瞬間だった。

●子どもにも“予定のない時間”を与える

北海道・沙流川での一枚。遊び道具がなくても自然があればみんな楽しめる

 家族キャンプで、子どもに「今日はみんな何もしなくていい日」と宣言。はじめは「暇だ〜」と言っていたが、そのうち虫を眺めたり、落ち葉を拾って遊んだり、大人発信で遊ばせようとしなくても自然にその時間を楽しんでいた。キャンプくらい、みんな自由気ままでいいのだ。

■どうやって“何もしないアウトドア”をキャンプで成功させたか?

 「何もしない」ために、しておくべきことはある。以下のような4つの工夫が成功のカギとなるので覚えておこう。

北海道・ニセコサヒナキャンプ場での一枚。スマホ置いて、空を見上げれば満天の星空が広がっていた

●スマホはオフか、機内モードに

 地図など必要な情報は事前に調べておき、当日はなるべく電源オフか、機内モードに。通知が鳴らないだけで、頭の中の静けさが増す。そして暇だからとスマホには触れないように。

●予定をあえて決めない

「○時にご飯」「○時に片づけ」などのタイムテーブルを持ち込まない。お腹が空いたら食べる、眠くなったら寝る、それくらいの感覚でいい。

少し霧がかった先に見える富士山。普段の生活では出会えない絶景だ(画像提供:吉田 哲大)

●荷物は少なめに。遊び道具は置いていく

 道具が多いほど「使わなきゃ」「遊ばなきゃ」というプレッシャーが生まれる。必要最低限に絞れば、行動もシンプルになりやすい。

●椅子にはこだわりを

 長く座っていられる椅子は、“何もしない”時間の質を大きく左右する。背もたれがあり、安定感のあるものがおすすめ。ここはケチらずに、しっかりしたものをセレクトしよう。