長崎県長崎市はコンパクトな市街地でありながら、明治維新にまつわる遺産が各所に点在する「和・華・蘭」(日本・中国・西洋の文化が入り混じっていること)の街である。筆者は観光のために夫と娘とともに長崎市へと赴いた。

 朝、長崎に着いて最初に訪れたのは、明治産業革命遺産「グラバー園」だ。園内に入ると、幕末の貿易商たちの旧居である洋館が丘に沿って立ち並んでおり、当時の風光明媚な長崎の様子を知ることができる。そして、なんといっても、眼下には長崎の海が一望できるのだ。

 長崎の海を見ていたら釣りの虫が騒ぎ始めた。「ちょっとだけ釣りしてみない?」 いつもの誘い文句で夫と娘を海に連れ出した。 

■観光の合間に20分だけ釣りしてみた

「都会の中の海」は釣れないのが定番だが、長崎は別格だった
今回の釣りではライトタックルを使用した

 長崎県は小さな島が多く、対馬(つしま)や壱峻島(いきのしま)、平戸(ひらど)、九十九島(くじゅうくしま)など、釣り人にとって「聖地」とも言える場所が多数存在する。その中でも今回の釣り場は、長崎県の県庁所在地であり、まわりには観光地だけでなく官公庁やビルもたくさん並んでいる「長崎市」だ。長崎市は海に面しているため、釣り場は観光地の周囲に多く存在する。市街地に近い場所ということもあり、釣り場の周囲には外国人観光客の姿も多数見られた。

 足元の海面を覗くと、ベイトであるイワシと見られる小魚の群れがあふれるほどに沸いており、長崎の海の中はすでに春が来ているのだとしみじみと感じられた。 

賑わう都会の傍らの堤防

 その日のタックルは、車に積みっぱなしにしていたアジング用の一式だ。

 詳細は以下の通りである。

使用したタックル
ロッド:ウルトラライトのアジングロッド5.5ft
リール:スピニングリール1000番
メインライン:P.Eライン0.15号(グレーカラーを使用)
リーダー:餌釣り用のハリス0.8号を使用
ジグヘッド:0.8g
ワーム:アジング用2インチの蛍光カラー

 仕掛けを投げてみると、軽い仕掛けだからだろう、あっという間に潮流に流されてしまったため、沖ではなく足元を探ってみることにした。足元の海中に仕掛けを落とすとすぐに、深いところからぐぐっと大きなアタリを感じた。

 アジ釣りに用いる0.15号の極細PEラインを使用していたため、20cmを超える魚相手でもビッグファイトだった。慎重にやり取りをしていると、後方から「おっ、アラカブやね」と朗らかな男性の声が聞こえた。海面から元気よく飛び出してきたのは25cmの良型カサゴ(現地名アラカブ)だった。