<中川さんがやっちまった半農半Xの失敗談「後編」はこちら>

■毎日強制的にでも畑に行くことが大事

毎日畑に出ると、とてもいい風景に出会えることがあります

 近所の専業農家の方に相談してみると、「良い作物を作るには、少なくとも3〜5年はかかるよ」と言われました。

 元々、田んぼだった湿った土を、畑に合うふかふかの土に変えるには時間がかかります。また気候や土質によって、同じ苗でも出来が変わってきます。天気によって水やりの回数や肥料の与え方を変えるなど、コツをつかむまでそれくらいの年月はかかるという話でした。

 草刈りなどの畑作業をするために、毎日畑に通うことも良い作物を育てる1つの条件です。どうせ畑に毎日通うのだから他の野菜も育てよう。そう考えているうちに、我が家の生活は自給自足に近づいていきました。

 僕はトレイルランニングのプロランナーとしても活動しているのですが、ランニングの世界でも始めたばかりの頃は目標となるレースを決めて、強制的に日々トレーニングすることが重要です。毎日トレーニングをする生活リズムを作らないと、本当の意味でランニングがライフスタイルにはならないのです。

僕にとって走ることと耕すことはライフスタイルの一部

 僕の場合はライフスタイルの一部になってからは、なんのために走るか、どう走るのか、コミュニティを作って…… とトレイルランニングが人生の哲学のようになっていった経験があります。畑にも同じことが言えるのではないでしょうか。まずは生業としたいならば、毎日強制的にでも畑に行くことが大事なのです。

 毎日畑に通っていると、その時にそこにいないと見られない美しい風景にも出会えます。夏場は暑いので早朝から畑に行くと川霧が見れたり、冬は霜に朝日が差してキラキラ光る風景が見られたり。畑の隣の棚田では、水を張った棚田に映る夕焼けや秋の風に揺れる稲穂も綺麗です。田舎暮らしでみなさんがイメージするような、牧歌的で土の哲学的な農的暮らしに至るまでには、しっかり生業としての畑に通い続ける月日が必要かもしれません。

■関係人口づくりの大切さ

イベントに出向き、自ら販売するのが自分なりのブランディングです

 前述の通り、蜜香屋の畑担当を務めている僕は、春から秋のシーズンは龍神村でさつまいもを育てています。畑がオフシーズンになると、大阪近郊のイベントに出向き、自分で育てたやきいもを販売しています。消費者に対面で直接、龍神村の自然環境の素晴らしさや土づくりのストーリーを語れるのが、自分ならではのやきいも販売スタイルであり、ブランディングだと考えています。

 売る側と一緒に育てて、加工して、消費者に自分の手で販売できる喜びがあるのは、小売を手がける会社と一緒に畑を運営するからこそのメリットだと思います。そうして都会やイベントで対面販売を続けることで、龍神村を知って頂けるきっかけづくりができてきました。「うちの隣の畑が空いていて」と声をかけられることもあり、耕す面積は年々増えていて、収穫体験にたくさんのお客さんが来てもらえるようになりました。

 しかし、耕す面積を増やすのは良いことばかりではありませんでした。僕は手を広げすぎて失敗した経験もあるのですが、この話は後編で。

<中川さんがやっちまった半農半Xの失敗談「後編」はこちら>