<中川さんが半農半Xを始めた経緯「前編」はこちら>

 移住して始めたさつまいも農家としての活動が5〜6年目を迎えて、半農半Xのライフスタイルが安定してきた頃、僕は大きな失敗をやらかしてしまったことがあります。

■半農半Xの生活はバランスと計画性が大事

さつまいも農家としてのスタートは順調だった

 僕はさつまいも農家の他に、珈琲焙煎士、プロのトレイルランナーと3足のわらじで活動をしています。それぞれの活動に忙しい毎日を送る中で、畑仕事にも慣れてきたこともあり、「さつまいもは勝手に育つから大丈夫だろう」と高を括って畑に行く時間が少なくなった時期があったのです。

手をかけた分だけ、植物は返してくれます

 植物は正直です。手をかけなかった年は、さつまいもの収穫量が激減してしまいました。さらに、調子よく周囲の休耕田の再開墾を引き受け過ぎて、広範囲の畑の管理が行き届かなくなりました。結果、草が伸び放題になり、周りの畑の皆さんに迷惑をかけてしまうこともありました。

 半農半Xの生活では、畑とライフスタイルの時間的バランスや畑の広げ方の計画性が大事だということを痛いほど学びました。自分が面倒を見られる範囲の限界をしっかり見極めることで、ライフスタイルのバランスがとれようになると思います。

■プロダクトアウトか、マーケットインか

さつまいもとコーヒーを組み合わせたイベントを開催

 僕の実体験から言わせていただくと、生業として「半農半X」を実践するならば“自分が作りたいものを作るよりも、販売先を確保して作るものを決める”方が現実的かと思います。

 田舎暮らしのイベントで出会う各地の農家さんや、移住後に農家になった友人も、うまくいっている人はレストランなどの顧客を持っています。顧客と直接やり取りしながら、求められる野菜を作り、さらに農家としてのストーリーを語ることで自分達の野菜の魅力を上げているのです。

さつまいもとコーヒーを持って、イベント出店にも積極的に出かけています

 僕の場合は、一緒に事業をしているやきいも店「蜜香屋」が主な顧客です。時にはカフェで、時にはイベントで、自分が土づくりからこだわって育てたやきいもを販売しています。さつまいも農家としてお客さんと接していると、直接「おいしい」のお声を頂けて、やりがいを感じると共に、収穫したさつまいもがお金に変わるリアルを見られます。

 生産から販売までの過程に関わっていると、傷物や規格外のいもの有効活用法も見ています。僕の住む龍神村のお土産になるような、さつまいもの加工品を考えるうえでも、よい経験になっています。

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