●登山口から佐野川峠を経て三国山、生藤山へ

生藤山・三国山登山口の道標

 登山口からは舗装がなくなり、登山道に入ることになる。登山道は踏み跡も濃く、しっかりと整備されている印象。道標も分岐など要所に設置されており、道迷いの心配は少ないだろう。また、山名だけでなく大まかな距離も記載されているため、所要時間の目安にしやすい。

よく整備された登山道
山名などだけでなく、距離も記載されているので行動時間の目安にしやすい

 針葉樹や広葉樹が入り混じった豊かな植生の中を歩くので、新緑の季節は気持ちがいいだろう。

足元に落ち葉を敷き詰めたようになっている登山道
植林された針葉樹の樹林帯。遠くから間伐のためのチェーンソーの音が聞こえていた

 筆者が訪れたのは4月上旬。前の週に雪が降るなど春の気配は遠いようだったが、それでも木々は少しずつ芽吹き、所々で鮮やかな色彩を予感させる新芽を見ることができた。

春の訪れを感じさせる芽吹き

 生藤山までは基本的に上り調子の道が続くので休憩を挟み、無理のないペースで歩いてほしい。三国山までの道中には「桜のプロムナード」「甘草水(かんぞうすい)」という、景勝地と史跡がある。

木々の切れ間から眼下に街並みを望む

 桜のプロムナードは桜の景勝地として人気だが、テングス病に蝕まれ開花のないシーズンもあるようだ。開花時期に訪れた際は、ぜひ開花をチェックしてみてほしい。

 桜のプロムナードの看板を通り過ぎると、鳥居とお社が現れる。その脇を通り、さらに進むと佐野川峠に到着だ。

佐野川峠の道標。ここをエスケープ地点にすればバス停が近い

 佐野川峠は石楯尾神社(いわたておじんじゃ)から登ってくる道と合流している。体調不良や天候の悪化などで撤退する場合にはここから下山しよう。石楯尾神社前のバス停からは藤野駅の隣の上野原駅へも行ける。

 佐野川峠を越え、三国山への道のりの半分ほど歩いた頃に甘草水由緒という看板が現れる。日本武尊(やまとたけるのみこと)にゆかりのある史跡で、脇道に逸れると水量は少ないものの、清水が流れている。ただし飲用には適さないので、むやみに口にしないように!

日本武尊伝説のロマンを感じられる場所だ
甘草水は、ポタポタ程度。たっぷりと流れているわけではなかった

 甘草水由緒看板前を通過し、尾根を辿って標高を上げていくと、ついに三国山山頂に到着。広々としており、テーブルも2つ設置されているので昼食など長く休む場合には三国山がおすすめだ。

三国山山名の標識

 三国山は東の生藤山だけでなく、西へも登山道が熊倉山へ延びているので道標で行き先を確認、あるいはコンパスでしっかりと方角を確認してから出発してほしい。

道迷い予防のために歩き出す方向はしっかりと確認を!

 三国山からは生藤山は目と鼻の先。生藤山直下には巻き道がある。先を急いでいる場合や岩が露出した登りや下りが怖い、不安だという場合は巻き道を使おう。

生藤山直下の登り
こぢんまりとした生藤山山頂。登山計画の前半が終わった

 生藤山の山頂は三国山と打って変わってこぢんまりとしており、ベンチが数脚と山名標識が2つあるだけ。展望も最高とは言い難いが、静かに休憩するにはいい場所だと筆者は感じた。

■生藤山から東へ進み、山の神から下山

生藤山の山名標識。藤野町十五名山を制覇するのなら訪れることになるはずだ

 生藤山から東進し、下山ポイントである山の神を目指す。道中には茅丸(かやまる)、連行峰(れんぎょうほう)といったピークがある。

 茅丸は今回歩いた山々の中では最高峰で1,000mを超える。ピークハントを楽しむ方は、巻き道を使わず山頂を目指してはいかかだろうか。

 茅丸までは岩の露出した尾根を下るので、トレッキングポールを使っている場合は、バックパックに収納して歩く方が安定するだろう。勾配の急な箇所は手を使うなどゆっくり焦らず下ってほしい。

生藤山から下る道。意外と高度感がある
茅丸までの尾根の下りは、岩が多くトレッキングポールは使い難い

 茅丸を越えれば、連行峰までは広々とした広葉樹の尾根を気持ちよく歩くことができる。

1,000m越えの茅丸。今回の登山での最高峰だ
茅丸からの景色。遠方から広がる雲に雨の気配

 連行峰へ辿り着くと道は北と東に2つに分かれ、東の道は目指す山の神へ通じている。北へ進む道は湯場ノ頭を経て、檜原村方面の柏木野バスへ到達する分岐。登山者としてレベルアップし、奥多摩へのロングハイクを目指すのなら一考の価値ありのルートだ。

連行峰の分岐は醍醐丸・和田峠方面へ

 東へさらに歩を進めると、下山ポイントである山の神へ到着する。山の神にはベンチなどはなく、道標が設置されているだけなので見落とさないように注意しよう。

 醍醐丸へと足を延ばせば、マイカー利用の陣馬山登山口としても人気の和田峠へたどり着くことができる。反対に高尾山から陣馬山を経て、生藤山方面への縦走も可能だ。

山の神から下山ルート

 山の神からの下山ルートは九十九折りの下りとなる。スピードが出てしまいがちだが、落ち葉が積もった広葉樹林では足を滑らせないように、石がたくさん転がっている針葉樹林では浮石で転ばないように慎重な足運びで歩きたい。

 佐野川の流れが近づくと登山道の終わりが近い。舗装路に出ればバス停まではあと少し。自動車に気を付け、美しい山の思い出が事故の記憶となってしまわないよう注意してほしい。

佐野川の流れが近づくと山道は終わりが近い

■春の山は歩きやすいが、天候の急変には要注意!

下山し、和田の茶畑付近でついに雨に降られた

 春は暖かな気候となり登山に適しているだけでなく、山々も新緑に萌えて非常に美しい。しかし、春は天候が不安定な季節でもある。

 筆者が生藤山を訪れた際も急な雨に降られた。また、気温上昇に伴って汗をかく量も増え、防寒具を装備から外してしまいたくなる。

 だが、休憩中などは汗が冷えて少々寒く感じ、さらに雨が降る直前には冷たい風が尾根上に吹き付けていた。

 ダウンジャケットはオーバースペックかもしれないが、風対策の防寒具は汗冷え予防にもなるので雨具同様必ず携行してほしい。

 天候の急変と時折吹き付ける冷たい風の対策をしっかりとしたうえで、今回紹介した生藤山をはじめとした低山を楽しんでいただければ幸いだ。

 

生藤山周回コース
鎌沢バス停(0:00)→ 鎌沢休憩所(0:20)→ 佐野川峠(0:40)→ 三国山(1:40)→ 生藤山(1:55)→ 茅丸(2:10)→ 連行峰(2:30)→ 山の神(3:05)→ 和田バス停(4:20)
歩行距離:約9.3km
累積標高差:登り955 m、下り919m
合計所要時間:約4時間20分

●【MAP】生藤山