⚫️混雑度と官能度の組み合わせ。人気の山なら混雑を避けるルートを探す

 季節と標高の組み合わせだけでは「夏だから南アルプ スの北岳に登ろう」「冬だから雪のなさそうな奥多摩に行こう」というように、ふつうの登山のコ ースが導かれるだけである。つまり季節と標高の組み合わせは、積雪や暑さといったリス クを減らすための最低ラインを要素にしているのにすぎない。

 そこで「混雑度と官能度」の組み合わせが重要になってくる。混雑度というのは、そのコースにどのぐらいの登山者が予測されるのかということ。官能度とはそのコースの魅力の度合いである。

 「登山者の数など山の魅力と関係ないだろ?」という声も聞こえてきそうだが、いやいやとんでもない。気持ちよく歩き、美しい自然に没入するための山歩きなのであって、混雑して渋滞した登山道で見ず知らずのだれかの背中を見に山に行っているのでは楽しめないだろう。混雑した山は魅力が半減どころか、十分の一ぐらいに減ってしまうと思っている。

 なるべく人が多くない、できれば周囲360度の自然を独り占めできるぐらいの環境のところに行きたい。それこそがフラット登山の最大の魅力である。異論のある人もいるかも
しれないが、わたしはそう言い切ってしまう。登山のオーバーツーリズムなど、
まっぴら御免である。

地平線まで続く葦原の風景も独り占め!? 渡良瀬遊水地を行く

⚫️交通手段があるかどうか。アクセス方法も重視して

 クルマを使うのか、鉄道やバスなどの公共交通機関だけを使うのかで、ずいぶんと制限条件は変わってくる。私の場合は、ゴールした後に酒を飲みたい派なのでできれば目標とするエリアの近くまで鉄道で行き、そこからバスやレンタカーやカーシェアなどを利用することも多い。

 工夫次第でルートの選択肢も広がる。そんな計画を便利なグーグルマップなどを眺めながらの試行錯誤も楽しんでいる。

森と湖が迷路のように混ざりあう 裏磐梯を行く

⚫️高低差。なるべく平坦でゆるやかな道を歩きたい

 フラット登山は気持ちよく歩くことを主眼にしているので、理想は平坦でゆるやかな道をどこまでも歩いて行けるようなコースである。だから、計画を立てるときには高低差も考慮する。

 登山地図をアプリなどで開いて等高線に着目している。私は「山と高原地図」をいつも使っていて、その等高線でアップダウンを確認しているが、ヤマップやヤマレコなどは国土地理院のより詳細な地図を使っているので、より細かいアップダウンを拾うことができる。

 本書の後半には、フラット登山入門としてわたしが独自に設定した30のコースをどーんと掲載している。最初はそれらのコースを歩いてみて、フラット登山がどのようなものかを体感していただくのが良いだろう。

 そして慣れてきたら、ぜひ自分自身でフラット登山のコースを計画してみていただきたい。やってみれば、フラット登山の面白さの真髄がプランを立てることにこそあるということがおわかりいただけるはずだ。

 次回は、それらの一例を紹介していこうと思う。

<後編へ続く>「気軽に、気持ちよく、楽しく歩く」 ゴールデンウィークは「フラット登山」を楽しもう!  日本最強の異世界「富士山 青木ヶ原樹海をくぐり抜ける」