4月に入り、本格的な春気分といきたいところだが、寒の戻りもありまだまだ春の訪れを手放しに喜べない。標高の高い山々ではまだ積雪もあり、今の時期に登りに行ける山を探すのも一苦労だ。

 そんなまだまだ始まったばかりの春におすすめしたいのが千葉県・房総の山だ。気候的にも今の時期は歩きやすく、今回はシーズンに向けての足慣らしにおすすめな房総の山を3つ紹介する。

■房州アルプス「無実山(みなしやま・標高267m)」

青々とした木々が茂る無実山

 日本各地に「アルプス」と名のつく、ご当地アルプスルートが存在する。その中で今回紹介するのは、千葉県にある「房州アルプス」だ。

 房州アルプスの最高峰は無実山(みなしやま)で標高は266m、「無実」と書いて「みなし」と読むのでややこしい。

 登山道に入ると、春を迎えたばかりとは思えないような緑豊かな樹林帯が迎えてくれる。冬でも葉を落とさない常緑樹が多いのは、千葉県のハイキングルートの魅力といえるだろう。房州アルプスは全体を通して起伏が緩やかなので、しばらく山歩きを休んでいた人にとっての足慣らしにも最適だ。

無実山の登山道の途中、木々の間からはうっすらと富士山も確認できた

【コース】所要時間
房州アルプス登山口(0:00)→無実山(1:00)→房州アルプス無実山登山口(1:35)→三浦三良山(2:07)→大塚山(2:57)→房州アルプス登山口(4:49)
歩行距離:約10.0km
累積標高差:登り 706m、下り 707m
合計所要時間:4時間49分

●【MAP】房州アルプス・無実山

 

■房総のマッターホルンと呼ばれる「伊予ヶ岳(いよがたけ・標高336m)」

 伊予ヶ岳はなだらかな山が多い房総の山の中では珍しい岩峰で、千葉県内で唯一山名に「岳」がつく山である。

 平群天神社(へぐりてんじんじゃ)の脇に登山道があり、そこから山頂を目指す。登り始めると序盤は緩やかだが、徐々に勾配は急になり、山頂までは登りがいのある道が続く。

 分岐点にある東屋を過ぎるとさらに急になり、山頂直下ではロープを使う箇所もあるため、慎重に。距離は約2.9km、所要時間は2時間17分と短いコースだが、達成感を感じられる山だ。

伊予ヶ岳・南峰の山頂。せり出した展望台からは房総を一望できる

【コース】所要時間
伊予ヶ岳登山口(0:00)→分岐・東屋(0:45)→伊予ヶ岳・南峰(0:55)→伊予ヶ岳・北峰(1:02)→分岐・東屋(1:47)→伊予ヶ岳登山口(2:17)
歩行距離:約2.9km
累積標高差:登り 378m、下り 378m
合計所要時間:2時間17分

●【MAP】伊予ヶ岳・平群天神社

 

■巨大な石切場の跡地をめぐり海の絶景へ「鋸山(のこぎりやま・標高329m)」

 鋸山は石切り跡の剥き出た岩肌がギザギザとしているため「鋸山」と呼ばれている。かつては「房州石」と呼ばれる凝灰質砂岩の採掘場として盛えた場所で、今でもその名残りが見られる。

 JR内房線・浜金谷駅(はまかなやえき)を起点とし、鋸山は周回するように歩ける。道中には石切場跡地が点在しており、見どころが多い。なかでも「吹抜洞窟(ふきぬけどうくつ)」は5階建てのビルくらいはありそうな高さのある洞窟で迫力満点。

吹抜洞窟。近づいてみるとその大きさに思わずたじろいでしまう

 吹抜洞窟から急登区間の先にある東京湾展望台からは、その名のとおり東京湾を一望できる絶景が広がる。鋸山で一番眺望がいい場所だ。

東京湾展望台。東京湾を一望できる。ベンチが設置されているため景色を満喫するのにぴったり

 鋸山の山頂は木々に囲まれているため、景色を存分に楽しみたいなら東京湾展望台で引き返すのもいい。

 下山する道中には岩舞台(いわぶたい)や観音洞窟(かんのんどうくつ)、ラピュタの壁と呼ばれる名所がある。まるでアニメの世界に入り込んだようななかでの山歩きを楽しめるだろう。

 標高の高い山こそない千葉県ではあるが、見どころの多い山がたくさんある。シーズンインに向けての足慣らしをしに、房総の山へと出かけてみてはどうだろうか。

【コース】所要時間
浜金谷駅(0:00)→東京湾展望台(1:25)→鋸山(1:40)→観音洞窟(2:30)→岩舞台(2:50)→ラピュタの壁(3:05)→浜金谷駅(4:00)
歩行距離:約5.9km
累積標高差:登り 626m、下り 626m
合計所要時間:4時間00分

●【MAP】鋸山