山小屋ってのは、営業日がやってきたら「さあ、始まるぞ!」と急にスタートできるものではない。冬の間から今シーズンの準備は始まっている。実際には、前年の営業中も翌年の話を進めていたりもする。
頭の中は、常にどうしよっかな〜と色々なことを考えていて、わからない先々に不安になったり、ワクワクしたり。まだまだ私はニューカマーなので、とにかく準備に時間がかかる。
さてさて、今シーズンも光岳にお越しのみなさんを気持ちよくお迎えし、安全登山のお手伝いができるよう計画中です。お楽しみに。
■一人ではとてもできない小屋開け作業

6月になると、私はパンパンに荷物を詰め込んだ軽乗用車で、ヘリの荷上げをする川根本町へ向かう。同じ頃、スタッフの高橋くんが遠山郷から光岳へと登り始める。最近は6月に台風がやってくることも多く、梅雨&台風のダブルパンチ。晴れ間を縫うようにして山に入る。
高橋くんはすぐに使う私物や貴重品を背負って、手鋸を武器に登山道整備をしながら上がっていく。今年は新たに熊スプレーも腰に携えた。ヘリが食料を運んでくるまでの数日分、食料は極力減らし、蕗味噌や南蛮漬けなどご飯のお供と行動食、好物ルヴァンのパンを背負って小屋に上がる。「米があるだけでいいよ」と言ってくれるが、それでも彼の荷物は30kg近くある。その荷物を背に、登山道整備をしながら登っていくのだ。
やるしかないのだから仕方のないことだけれど、「1人で小屋にいて寂しくない?」と聞いたことがある。「まだ誰もいない、お客さんもいない、静かな小屋って結構好きなんだよね」と風船をポーンと飛ばしたみたいに、ふんわりと言っていた。
山の上のことは、すべて高橋くん任せ。天気を見ながらの段取りも、お手伝いさんの采配も、みんなの賄い作りも。こういったなんでも屋さんみたいことは、2、3日ですぐにできるようなものではないよな、と感心してしまう。家業の仕事を長く手伝っていたことや、海外を旅していたことも、全部今に繋がっているのだなと。経験もそうだけれど、その場その場での出会いを大切にしてきた人なのだろう。つまり、何が言いたいかというと、高橋くんがいなければ、ヘリが飛ばせず、荷物が上がらないのだ。
光小屋の3シーズン目も、一緒に始めることができて心強い。小屋のメインスタッフは私たち2人ぼっち。それぞれがなすべきことをやって、やっと小屋開けの準備が整う。そしてそこからが、待ってました! 強力な助っ人の皆さんの出番。皆さんのサポートがなくては、光岳の小屋開け準備はできない。