■光岳小屋はどうしているかと言いますと……

空を飛ぶゴミの準備。ガスボンベ、燃料タンクも。せーの、せーのとモッコを引っ張って不備のないように

 光岳は小さい小屋なので、ゴミ置き場が元々ありません。近年は、高所といえど気温が高くて、前管理人さん時代に食材やビール置き場として使っていた倉庫に食材を置けなくなってしまった。

 代わりに、その倉庫はゴミ置き場にしている。中にはダンボール、アルミ缶、スチール缶、ビン、不燃、可燃と生ゴミ以外の全てのゴミが保管されている。ヘリは年に一度なので、6月末の荷上げの際に、前年のゴミを麓に下ろすのだ。

 わたしはヘリ荷上げ終了後すぐに、川根本町から遠山郷までぐるっと車で回って登山口に向かうので、下ろしたゴミは小屋の管理をしている川根本町役場の皆さんが処理してくださる。ヘリ荷上げ場所から登山口まで5時間もかかる……ので、「あとはやっとくよ〜」と言ってくださるのだ。まさにこういうのをおんぶに抱っこというのではなかろうか。ほんと、毎年ありがとうございます!

 一年寝かせたゴミをお願いするので、不燃可燃は町指定のゴミ袋を購入し、分別はしっかりしておく。ゴミなのにおかしな言い方だけど、1年間“綺麗に保管”するようにしている。そのため、小屋で提供する食事はゴミをあまり出さないで済むことも、メニュー構成を考える1つのポイントとなっている。

 お客さんの食事は、できるだけ食べ残しがないようにしたい。もちろん、高所なので体調不良などは仕方がないけれど、例えば、「さっき、お昼のおにぎり食べちゃってお腹いっぱいだ。残していい?」と聞いてくれる人には、「明日も元気に歩くために食べなくちゃ!  時間かかってもいいですよ」なんてニコニコ言って、食べてもらうこともある。多分、これはやりすぎだけどね。「嫌いなのものや食べれないものがあれば、最初に分け合ってくださいね〜」と声かけし、最初にお出しするご飯は小盛りにしている。

 麓での食材調達でお世話になっている業者さん、食材を上げてくれるヘリ関係者、調理しているスタッフたちの顔が浮かぶ。「残すなら先に言って〜。私たちも食べたいので!」という思いもある。

■生ゴミはどうしているの?

キエーロは卵の殻も細かくして土と混ぜる。今年はカボチャの種から花が咲いた!

 どこの山小屋も生ゴミの保管には神経を使うだろう。置いておくと動物にやられるし、衛生的にも良くない。

 今まで働いた山小屋では生ゴミ乾燥機を使っているところや、生ゴミをそのままコンポストに入れているところもあったけ。乾燥させてから焼却、またはヘリで下ろす小屋があれば、ヘリが頻繁に飛ぶ小屋では生ゴミを一斗缶に入れて下ろしていたり。入下山が多いところは、下山する人が生ゴミを背負って下げているとも言っていた。

 しかし、乾燥させるにしても電力が必要。みな、工夫と苦労をしている。

 前管理人さんに、「以前は外のドラム缶に生ゴミを保管していたけれど、ニオイで熊が寄ってきてしまったことがあるから気をつけて」と聞いた。引き継いで間もない頃、2年間休業した後のゴミを処分した。ドラム缶に入ったどろっどろの生ゴミは、ニオイ、水分が強烈だった。下ろしてから役場の皆さんに処分してもらうのも気が引けるし、夏場は臭いもハエも心配になった。なにかいい方法はないだろうか?

 そこで、またも登場するのがスタッフの高橋くん。「キエーロはどうかな?」と知識をお裾分けしたくれた。キエーロとは、土の中に生ゴミを入れてバクテリアの力で分解する生ごみ処理機のこと。臭いがなく、ずっと入れ続けても土の量が増えないことが特徴だ。そして基材となる土を増やす必要がないので、ランニングコストはゼロ。この標高で微生物は働くのか、臭いはほんとにないの?  と心配はあるけれど、まずはやってみよう。早速、高橋くんはキエーロの公式HPで作り方を調べ、材料をヘリで上げた。

 それから3年、今年もキエーロは頑張ってくれていて、問題なく稼働している。今年はかぼちゃの種から芽が出て、綺麗な花を咲かせていた。毎日、蓋を開けて観察するのも楽しい。手間と思わずに、なんでも楽しくできたらいいよね。