サウナブームが沸き起こって早数年。巷はサウナーで溢れ、こだわりのサウナ施設は順番待ちも当たり前。いっぽう、そんな世間とは隔絶された場所でサウナを楽しめるのがテントサウナ。自然に囲まれ、各々のペースでゆっくりととのえて、冬は一面白銀の世界に身を投げだすこともできる。その後訪れる“ととのい”は最上級なのだとか。テントサウナメーカー「ABiL(アビル)」の原田さんにそんな極上の世界について聞いてみた。
■テントサウナと施設サウナはナニが違う?
テントサウナのいいところは少人数で行うので、他のお客さんに気を使ったり、周囲の声が気になったりという息苦しさやストレスが少ないところです。通常のサウナ施設だと大勢のお客さんがいるので、マナーを気にかけたり、他人と肌が触れ合うのを気にしたり、水風呂に人が入りすぎているから入るタイミングを選んだり、結構気を使いますよね。最低限のマナーさえ守れば、自由度が高いんです。
また、自分たちでロウリュをしたり、アウフグース(熱波)ができるので施設サウナに比べて楽しめるアクティビティが多いです。サウナを行う場所によっては滝に打たれたり、川に入ったりと遊び方も探せる。アウトドアなので四季も存分に感じられるなど、楽しみ方の幅が本当に広いんです。
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施設サウナと違って、“あらかじめ、何も用意されていない状態”なので、自分たちのアイディアを形にできるのも魅力です。どうやったらもっとととのうか? を考えて、「次は横になれるものを持ってこよう」とか、「座高の高い椅子を用意しよう」とか、「ロウリュにこの香りをつけてみよう」とか自分たちで質をアップデートできるのがまた面白いんですよ。
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あ、あとこれは喫煙者だけの特権なのですが、サウナを出たあとに毎回タバコを吸えるのは、めちゃくちゃ良いです(笑)。
■アウトドアかつ冬だからこその魅力
冬は寒いからこそ、サウナに入って「寒あったかい」みたいな気持ちよさというのもあるんですが、雪が音を吸収してくれて周囲が静寂に包まれます。この静かさってかなり重要で、施設サウナだと、人の声や桶が落ちる音などに対して、雑音を意識しないように変に意識してしまうのですが、ここではそんな必要もなく、自然とととのう状態に入れるんです。
あと、水風呂が冷たいというのは大きな魅力です。サウナって熱さも大切ですが、それ以上に水風呂の泉質や温度も重要で、水がヌルいと全然ととのわないんです。逆にサウナがいまいちでも水風呂がキンキンならととのえる。僕はサウナ以上に水風呂のほうが大事だと思っています。
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テントサウナの場合、外に水風呂を用意しているので10℃前後まで温度が下がります。それだけでも十分ですが、さらに雪を入れて2℃くらいまで下げると、すごく冷たくなって、水風呂から出たあとは、ジバリング(※)しちゃうくらい寒くなります。ですがそんな極限の状態だからこそ、ととのいのデカさも半端ない。ととのいの勢いが違うというか……。椅子に座った瞬間、吹っ飛びそうになるくらい気持ちいいんです。
※ジバリング=体温が下がった時に筋肉を動かすことで熱を発生させ、体温を保とうとする生理現象
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サウナが終わったあとの焚き火にあたっている時間も特別感があります。他の季節でも焚き火はできますが、冬の寒さのなか裸で焚き火にあたって、お酒を飲んだり、飯を食べるのはとくに最高。ハジメマシテの人同士でも同じ時間を共有して仲良くなれるのはテントサウナの良さです。
サウナは、雪に対する見方も変えることだってできるんです。雪国で育って、雪はやっかいなものだと思っていたというお客さんが雪上でサウナをしたら、「雪がこんなに素晴らしいものだとは思わなかった。雪が好きになった」と嬉しそうに喋っていました。
雪上のアウトドアサウナは、施設サウナをひと通り巡った人でも衝撃のサウナ体験なんです。アビルでは冬のテントサウナイベントも行うので、ぜひ体験しにいらしてください。
●ABiLとは
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新潟発アウトドアサウナメーカーとして、サウナに関わるグッズとテントサウナを販売。「グッドサウナバイブス」をテーマに掲げ、アウトドアサウナだからこそ得られる世界観を追求し広めている。
●interviewee PROFILE
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原田 応人(はらだ おうじん)
サウナ好きが高じて、サウナ小屋を自身でビルド・運営した経験を持つ。その後ABiLと合流し、最高のアウトドアサウナ体験を流布するべく全国を駆け巡る。
【「SNOW TRIP MAGAZINE 2024」より再編集】