年末年始の長期休みが明け、混雑や遠出はしばらく遠慮したいけれど、せっかくの休みは静かな山で体を動かしたい。そんな方々のリクエストに応えるフィールドといえば、奥多摩エリアの山々です。

 紅葉の喧騒が去り、新緑の賑わいを迎える前の1、2月の奥多摩は登山者も少なく、静かな山歩きと美しい冬枯れの稜線歩きが楽しめます。個人的には「この時期こそ、奥多摩のベストシーズンではないか」と思うほどです。

 今回は首都圏からアクセスしやすく、適度な歩き応えも味わえる「六ツ石山(むついしやま)」を目指すルートの詳細と、現在のルート状況を紹介します。週末登山の候補地選びの参考にどうぞ。

■標高は高くないが、登りごたえは抜群

水根の集落の中から登り始めます

 今回の目的地・六ツ石山は、奥多摩湖の北側に位置するエリアを代表する山のひとつ。標高は1,478mとそれほど高くなく、日帰りで登れる山ではありますが、どこから登り始めても標高差が大きい行程になるため、必然的に登り応えのある山行となるでしょう。

水根の駐車場。冬の平日はガラガラでした

 JR奥多摩駅から出ている西東京バスを使い、南側の水根バス停(マイカーの駐車場もある)から往復するのが一般的なルートです。他に奥多摩駅から登り始めて、水根バス停に下りたり、逆に水根バス停発で奥多摩駅に下りたり、日数を足せば七ツ石や雲取山などと組み合わせたりと、多彩な計画を立てることができます。

 ちなみに、水根からトオノクボを通って山頂を目指すルートは、鷹ノ巣山の稲村岩尾根、本仁田山の大休場尾根と並び、「奥多摩三大急登」に数えられています。

■きつい登りの先に、素晴らしい稜線歩きが待ち受けている

登り初めから、なかなかの斜度が続きます

 山行当日は、朝イチに水根の駐車場を出発し、まずはトオノクボ経由で山頂を目指しました。

 たしかに三大急登に数えられるだけあって、登り始めからなかなかの斜度が延々と続きます。しかも単調な人工林の風景の連続に心が折られそうになりますが、ここをひたすら2時間ほど我慢してトオノクボまで乗れば、その先には冬の奥多摩ならではの素晴らしい風景が待ち受けています。

冬枯れの気持ちの良い稜線

 冬枯れの美しく、明るい稜線の気持ちのいいこと! ピーンと冷え切った空気の中に響くのは、自分の息づかいと深い落ち葉を踏む足音だけ。葉が落ちた木々の間には、秋までは見えなかった広々とした景色が広がります。辿り着いた六ツ石山の山頂も明るく広々としていて、天気が良い日は富士山や南アルプスまで見渡すことができます。

葉がない季節だからこその展望です

 しかし、このルートのハイライトは山頂よりも、この先の水根山へと続く石尾根歩きにあります。体力と時間に余裕があれば、ぜひ足を延ばしてみましょう。稜線上にはいくつかピークがあって、南側を巻く道もありますが、ぜひ尾根上を歩くルートをゆっくりと辿ってみてください。冬の奥多摩の素晴らしさを存分に満喫できると思います。特にこの時期の冬晴れの日は、自信を持ってみなさんにおすすめできるパートです。

葉のない巨木の造形美も冬ならではの楽しみ