登山スタイルに関するお気に入りは誰しもある。筆者も山・ルート・季節・アイテムなど、さまざまなお気に入りがある。

 そして、そんなお気に入りの登山スタイルをより快適にできる方法が「パッキング」だ。バックパックの背負い心地や、疲労にもつながるパッキングを見直せば、さらに登山を快適に楽しめるだろう。

 今回は日本航空(JAL)のYouTubeサブチャンネルに公開の動画で、73万回も再生されているキャビンアテンダント(以下CA)のパッキング術を参考に、登山で実践してみた。

 国内外を忙しく飛び回り、手早くコンパクトに荷物をまとめることを日常的に行っている、CAたちのプロフェッショナルな技。衣類はもちろん、小さく軽いものから大きく重いかさばるものまで、さまざまなものをスーツケースにパッキングするテクニックが紹介されている動画だ。

 今回はCAのパッキング術と登山のパッキング術を組み合わせ、筆者お気に入りの山と温泉、街歩きまで楽しむプランを実行し、どれだけ違いがあったのかをレポートする。

■いつも通りにパッキングし、実際に歩いてバックパックの状態を確認

登山プラス街歩きと温泉のためにパッキングする荷物と、30Lクラスのバックパック

 今回はJR藤野駅をスタートし鷹取山(たかとりやま・472m)へ。下山後は藤野駅からバスで温泉へ行き、その後街歩きをする筆者のお気に入りプランだ。

 低山を日帰りで登る場合には20Lぐらいのバックパックでも十分なのだが、下山後もいろいろと楽しむとなると、30Lクラスのバックパックが必要だ。まず比較のため、普段通りの方法でパッキングしてみた。

いつも通りにパッキングしたバックパック。少々歪に見える

 レインジャケット、着替えと入浴セットは付属のスタッフバッグへ収納し、可能な限りコンパクトに。そして、街歩きのための靴も収納した。

街歩きに欠かせない靴はシャワーキャップで鞄に入れやすく工夫

 低山とはいえ登山には違いないため、行動食や予備の水、ファーストエイドセットなど山のための荷物もパッキングした。パッキングした荷物を背負い、片道1時間程度の公園でパッキングの状態を確認する。

バックパックをコンプレッションしても、デッドスペースを完全になくせなかった

 靴やクッカー、シャンプーなどの入浴セットなど固いものが多いためか、埋めきれないデッドスペースへ小さく収納したレインジャケットが入り込んだり、靴が背中から離れて揺れ動いたりしていた。

 大きな移動ではないのだが、荷物で体が振られる感覚があり、階段を使う足取りも慎重になる。今までは当たり前のように背負って歩いていたが、比較のため背負い心地や歩く際の重心などを精査してみると問題があった。

■登山当日!  CAパッキング術を取り入れてみた

バックパックの外観はさほど変化がないが、体力的にかなり余裕が生まれた

 登山当日はCAパッキング術を活用し、テスト歩行と同じ荷物をパッキングした。しっかりとバックパックをフィッティングし、鷹取山登山口へ向かって藤野駅を出発。

 歩き出してすぐに違いを感じる。バックパックがぴったりと背中に添って、重量の感じ方が明らかに違う!  今までと比べてはるかに楽だ。重さは変わっていないのに肩や腰への重量が分散され、上半身全体で背負っている感覚だ。

CAパッキング術を参考に着替えとレインパンツでデッドスペースを埋める
雨で濡らしたくない着替えを詰めたスタッフサックは、丸めずに薄く広げた(隣はサイズ比較の文庫本)
普段は小さくするため着替えは丸め、レインジャケットはスタッフサックに収納(下はサイズ比較の文庫本)

 フィッティングが奇跡的に上手くいっただけかもしれないと考え、もう一度バックパックを背負いなおしたが、やはり普段と重量の感じ方が違う。これは期待できる。ワクワクしながら登山口から山道へ入る。落ち葉が降り積もった道も急斜面もなんのその!

バックパックが安定しているためか、落ち葉が積もった急登も安心して歩けた

 バックパックとの一体感があり、スイスイ足が進む。「パッキングひとつでこんなにも変わるのか!」と楽しく歩いていると、眼前に岩場が現れた。

 今までは岩場を乗り越える際にはバックパックが振られる感覚があり、怖い思いをすることもあった。だが、今回は足運びを慎重にしつつも、荷物がバックパック内で揺れ動かないので、安心して岩場を乗り越えられた。

バックパックが安定し、精神的にも余裕ができた

 その後は難所もなく、気持ちよく歩いて鷹取山山頂へ。遅めの朝食を食べてしばし山頂で寛ぎ、下山後の温泉や街で食べる昼食に心躍らせつつ、のんびりと下山。この間も、バックパックはずっと背中で安定していた。