登山には色々なセオリーがある。
例えば、綿の衣類は避ける、濡れは大敵、道に迷った場合には来た道へ引き返したり、ピークや尾根に登り返したり、重たい荷物はバックパックの上へといったものがある。
登山を始める際に筆者もネットなどで情報を集め、登山専門店でスタッフの方に色々と質問して知った。
しかし、これらの情報が経験を伴った知識として身についたのは、手痛い失敗を経験したからだ。
今回の記事は、登山経験の中で筆者の行動を変えた印象深い失敗を、実践した改善策とともに紹介する。
■真夏の山で寒さに震えた経験
登山で「濡れ」は大敵。夏山であっても一度濡れてしまえば、容易に体温が奪われる。
そのことを実感したのが、登山1年目の高尾山での失敗だ。
筆者と友人は山頂を目指す途中で雨に降られ、友人は100均の雨合羽を使用し、筆者はそのまま濡れた。
真夏だからという油断と、バックパックを下ろしてレインウェアを取り出すのが面倒という気持ちがあった。
しかし、山頂で雨脚が強まり、風が強く吹き出したことで状況が一変する。
東屋に避難したが、濡れた衣服が風に吹かれて異様に冷たかった。8月の中頃だというのに歯の根が合わず、体も震えていた。隣では雨に濡れていない友人が震えていた。
原因は汗。
透湿性のない100均のビニール雨合羽の内部が蒸れ、全身にびっしょりと汗をかき衣服を濡らして筆者と同じように風に吹かれて体温を奪われていた。
雨でも汗でも山では濡れてしまうと、真夏でも寒さに震えると学んだ失敗だった。
●濡れは、外と内どちらも対策する
真夏の山で寒さに震えた経験は、筆者に山で濡れる危険性を認識させた。
体を濡らさないことは季節を問わず重要で、雨だけでなく汗による濡れにも対策が必要だ。
透湿性に優れたレインジャケットも完全に汗による濡れを防ぐことはできないため、ドライウェアが重要になる。汗を速やかに体から離してドライな状態に保ってくれるため、レインジャケットを着用して蒸れても、行動中に汗をかいても快適に行動できる。
そして、濡れ対策をしていなかった当時の筆者を助けてくれたのが着替えだ。濡れた服から着替えたことで冷えが解消された。それまでは汚れたときに着替えるため(もちろん、そういった用途でも活用できる)という考えだったが、びしょ濡れの状態から着替えた時の冷えの軽減具合を体感して、考えを改めることとなったのである。
また、「取り出すのが面倒」とならないようにレインジャケットのパッキング位置にも注意し、簡単に取り出せる場所を定位位置とした。
この失敗以降は推奨される装備や持ち物にはどんな意味があるのかと考え、装備のリスト化をするなど事前の準備も丁寧に行うようになった。
■強烈な頭痛で撤退! 原因はバックパックだった
体調不良で撤退する理由は気温であったり、食べ物であったりと様々だが、筆者はバックパックが原因の頭痛で撤退した経験がある。
初めてバーナーを使用した調理で山飯を楽しむ計画だったため、普段よりも水を多く持ち、食料やクッカー類を背負っての登山を行った時のことだ。
体調の変化に気づいたのは食事が終わり、出発する時だ。
感じたのはバックパックの重さ。調理と食事をして、荷物の重量は確実に減っているのに、ずっしりと肩に重みがのしかかっていた。体感としては登山を開始した時と変わっていない。
さらに荷物が揺れるたびに肩が痛むようになっていく。悪いことに肩の痛みは次第に範囲を増して強烈な頭痛を引き起こすまでになり、痛み止めを服用してエスケープルートから下山することになった。
例え登山用バックパックでも、いい加減なフィッティングでは用を成さないと実感した失敗だ。
●バックパックは、フィッティングとパッキングで背負い心地が一変する
下山後に頭痛がつらく、病院に行くと「肩凝りが原因」と診断された。バックパックの背負い方が悪く、肩が血行不良に陥ったのだ。
こういった事態を防ぐために見直したのが、バックパックのフィッティングとパッキング。
フィッティングに関しては購入時に教わり手順は覚えていたが、「自分の体に合わせたフィッティング」を実行できず、全てのベルト、ストラップ、ハーネスを限界まで絞っていた。
そんな雑なフィッティングを改め、登山の最中にも細かな調整を行うだけで、ぐっと体への負担が減る。
さらにパッキングも登山のセオリーである「軽いものは下へ。重たいものを上へ」という基本をおさえつつ、より自分が背負いやすい重量配分を探した。
加えて内部で物が動かないようにウェア類で抑えるなどパッキングに関しても細かな修正を繰り返し、現在ではバックパックの調整不足による撤退はなくなっている。