■ウラギンシジミの越冬観察の仕方

ウラギンシジミのオス

 先述の通り、ウラギンシジミは常緑広葉樹の葉の裏などで越冬する。裏ばね(はねを閉じた時に見える面)が真っ白であり、これを銀色と見立てたことが「ウラギン(裏銀)」の名前の由来。はねを開いた時に見える「表ばね」にある紋の色が雌雄で異なる(オスは赤色、メスは白色)ことも特徴的だ。

 このウラギンシジミの越冬を観察するには、「秋」からその行動に注目するのがおすすめだ。

 ウラギンシジミは年に2〜3回ほど発生するチョウで、越冬する個体は9〜11月頃に羽化する。羽化後、秋も深まり寒くなってくると、徐々に葉の裏に止まっている個体を見かけるようになる。晩秋のタイミングではまだウラギンシジミの個体数も多く、比較的容易に葉の裏に止まっている個体を見つけられる。そのため秋から観察していると、どのような樹木・場所を越冬場所として好むのかを把握することができるだろう。

■越冬できる個体は非常に少ない

ウラギンシジミのメス

 ところで、越冬準備を始めた虫の中で、無事に翌年の春を迎えられるものはわずかだ。

 株式会社地球環境計画社が行ったウラギンシジミの越冬調査の結果でも『ここ数年の調査で、多い年でも60頭中7頭。少ない年には、32頭中1頭しか越冬を成功させていない』(株式会社地球環境計画, 1996 . 「ちいかん NewsLetter」 6号 p1 .)とある。この調査は20年以上前に実施されたものなので、この頃より平均気温が上がっている現在では多少結果が変わるかもしれないが、とはいえ虫にとって越冬とは非常に過酷なイベントなのだ。

ウラギンシジミは、表と裏でこんなに表情が違う

 実際に冬を迎える前から彼らを観察していると、秋にはよく見かけたウラギンシジミも、季節が進むにつれ個体数を減らしていくのがわかる。秋から越冬行動を観察することで、虫にとっての越冬の過酷さを、よりリアルに感じることができるだろう。この越冬という試練を乗り越えた個体には、ぜひとも世代を繋いでいって欲しいものだ。

 常緑広葉樹の葉の裏で越冬するウラギンシジミなどのチョウは、冬の昆虫観察において比較的観察しやすい対象である。分厚い緑の葉をつけている樹木を見かけたら、その葉の裏にチョウが休んでいないか探してみてほしい。