長野県中部、岡谷市と塩尻市にまたがる「高ボッチ高原」は、絶景スポットとして県内外に広く知られており、多くの観光客が訪れています。とくに晩秋から初冬にかけては、雲海や霧氷などの気象現象と合わさった一枚が狙える場所でもあります。

 11月下旬、林道が冬期閉鎖になる直前に夜明けの感動的なシーンを狙いつつ、冬化粧した山々を眺めに行ってきました。

■これ以上は望めないほどお手軽な登山「高ボッチ山」と絶景展望台

展望広場の駐車場から見た高ボッチの山頂部。本当に“すぐそこ”です

 高ボッチ山の標高は1,665mですが、歩く標高差は25mほど、距離にして400m少々です。少々拍子抜けするかもしれませんが、その分ここまでの道中が大変です。国道20号線塩尻峠(塩嶺峠)から、もしくは「崖の湯温泉」から、いずれも狭く曲がりくねった山道を車で登ってこなければなりません。管轄する塩尻市によると、2024年は12月2日から冬季閉鎖になるそうです(11月12日発表)。

山頂へと延びる登山道。霧氷の草原歩き

 「でいだらボッチ館」高ボッチ高原のキャンプ場がある第2駐車場からほぼ東へまっすぐ。緩やかな丘の先、草原のなかをいく道はそれだけでも絵になりそうな牧歌的な風景です。ふと足元を見ると立派な霜柱が立ち上がっています。

山頂標識にも霧氷がびっしりと付いていました

 10分ほどで、あっけなく山頂へと到着しました。霧氷に飾られた木製の山頂標識が出迎えてくれます。広い山頂は360°の視界が開けた展望台です。八ヶ岳から富士山諏訪湖南アルプス中央アルプス、御嶽山、乗鞍岳、北アルプス南部。しばらく待っていると、ガスが抜けて北部までくっきりと見渡せました。どの山も稜線付近から上はすでに白く輝いており、なかでも北アルプス北部の山並みはひときわ雪の量が多いのが印象的です。

歩いてきた道を振り返って。北アルプス北部(写真右奥)の積雪量の多さが目立ちました
広い山頂。高くなった太陽の光が諏訪湖の水面を輝かせています

 雲海に浮き上がる島々のような名峰たち。登山、いやハイキングとしても短すぎるかもしれませんが、展望だけが目的なら最高のロケーションではないでしょうか。苦労するばかりが登山じゃないですもんね。

登山道の途中で見つけた立派な霜柱。日射を受けてすぐ形を失っていきます

 わずかな距離でお手軽な登山ですが、この時期はタイミングによっては凍っていることもあります。山頂から下る頃には溶けて緩み、泥濘(ぬかるみ)となっていました。カジュアルなスニーカーでは苦戦するかもしれません。最短ルートは本当にまっすぐ進むだけですが、途中に分岐もあります。とくにガス(濃い霧)のなかでは方向感覚を失って道迷いに陥る可能性がありますので、リスクが全くないわけではないことを肝に銘じておきましょう。

 すぐ近くには鉢伏山がこんもりとボリュームのある山容を見せています。絶景だけでは物足りない登山愛好者はこちらへ向かってもいいかもしれません。車道に戻ると北側まですっきり抜け、妙高方面も白く輝いていました。