ようやく冷え込みも本格化し、各地から雪の便りも届き出しました。いよいよ秋も終わろうとしていますね。しかし、まだ快適に登山を楽しめる山はたくさんあります。紅葉の季節から晩秋の景色へと変わりゆく山々を歩くのも、また気持ちのいいものです。

 大都市圏からのアクセスもよい鈴鹿山脈の名山へ。大人気の「御在所岳」の南隣、滋賀県と三重県の県境に位置する「鎌ヶ岳」へ登ってきました。

■鋭い山頂部が印象的な岩稜の山、鎌ヶ岳

武平トンネルの脇にある、武平峠への登山口

 山頂部の岩稜が印象的な鎌ヶ岳は標高1,161m。尾根筋からそそり立つ様子が顕著で、高さ以上に迫力を感じる山です。お隣の御在所岳同様、“鈴鹿セブンマウンテン”のひとつにも数えられています。

 山頂に向けていくつもの登山道が延びているのも特徴ですが、今回はその中でも一番短い所要時間で往復できる「武平(ぶへい)峠」ルートを選びました。まずは県境へ延びる国道477号線「鈴鹿スカイライン」を走り、峠を目指します。峠のトンネル周辺には無料の駐車場がいくつもありますので、ありがたく利用させていただきました。

 当日は前日までの暖かさから打って変わり、朝の気温は7℃。さらに北風が吹き付ける寒い日でした。車道の脇にある登山口から、まずは武平峠を目指します。すでに紅葉のピークは過ぎており、登山道には落ち葉が積もっています。風が強く吹くたびに、わずかに枝に残っていた葉が舞い散っていく様子に、どこかもったいない気持ちになりつつ、去りゆく季節につい感傷的になってしまいました。

■変化に富んだ尾根道を辿り、迫りくる岩峰に緊張する

鎌ヶ岳方面に少し登ったところから見下ろした武平峠。反対側には御在所岳が見えています
尾根上、花崗岩が侵食されてできた造形が目を引きます

 峠からは尾根上のルートになります。地形に合わせて細かく曲がりくねる道を辿り、徐々に標高を上げていきます。樹林帯を抜けたかと思うと、花崗岩の露出した見晴らしのいい場所も現れて、変化に富んで飽きさせません。木々が葉を落とした晩秋ならではの視界の良さ。やがて進行方向、目指す鎌ヶ岳の顕著な岩峰が視界に入ってきます。振り返ると御在所岳が雲の切れ間から射す光に照らされていました。

多くの木々が葉を落とし、秋の低い光が枝を輝かせます。まるで梅園のような印象も
岩がゴロゴロと転がる荒涼とした斜面、右奥には鎌ヶ岳の岩峰がそそり立っています

 そそり立つ岩峰は迫力があり、登山を始めたばかりのビギナーだと「一体どこを登るのだろう」と心配になるかもしれません。しかし、実際は岩登りをするようなことはありません。山頂直下は西側を巻くようになっており、うまく弱点をついた山道となっています。しかし同時に緊張感あるルートでもあります。道もザレていて滑りやすかったり、侵食されて痩せた箇所もありますので、とくに下りは慎重に。登山道は基本的に尾根上ですが、少々間違いやすい踏み跡もあります。

岩稜を直登することはなくても、落石や滑落の危険があるような場所、細く急な支尾根などを登っていかねばなりません

 山頂直下の岩場のトラバースを終え、狭く曲りくねった急登を登り詰めると山頂です。