近畿、中部地方で多くの登山者を集める御在所岳(標高1,212m)は、南北に連なる鈴鹿山脈の中心的存在です。三重県三重郡菰野町と滋賀県東近江市の境に位置し、人気の山だけに登山ルートも数多く存在します。
11月中旬の日曜日、紅葉を楽しみつつ展望に岩稜歩きができる「中登山道(中道)」を登り、下山はロープウェイで空中遊覧を楽しんできました。
■秋も終盤だけど、蒸し暑い樹林帯を登る
御在所岳は山頂部までロープウェイで行くことができます。そのため観光客の割合も高く、歩いて登っても興ざめしそうなものですが、四季を通じて多くの登山者が訪れるのは、それだけ魅力的な山である証拠でしょう。
「湯の山温泉」にあるロープウェイ駅から歩くこと約30分で、中登山道の入り口となります。ここにも駐車場がありますが、下山でロープウェイを利用するつもりでしたので、下から歩いてきました。
車道から登山道へ。森の中に入った途端に急登が始まります。花崗岩が削られたゴツゴツとした道は一歩一歩の段差が大きく少々ハードです。さらに雨上がりの蒸し暑さが追い打ちをかけるよう。もう冬も近いというのに、今年の夏を思い出させるような暑さでした。
週末ということで混雑を覚悟していましたが、登山道も数多くあり程よく分散するのでしょうか、意外なほどに空いており、ペースを保つことができました。
■中道ルートの醍醐味! 花崗岩の岩稜をいく
ちょうど紅葉のピークは中腹部くらいで、登りながら要所要所で開ける先に、明るい黄色や橙の色が暗い針葉樹のなかに灯火のように鮮やかでした。
ざらざらした花崗岩が目立つ御在所岳は、奇岩・珍岩も見どころです。傾いて並ぶ「負(お)ばれ石」や“絶対に落ちない”ことで有名で、受験生にも人気の「地蔵岩」などの巨石のオブジェたち。登山道の途中で遭遇できます。
痩せた尾根だけに岩稜ならではの難所もいくつも越えていかねばなりません。それぞれ、クサリやロープ、ハシゴなどが設置されています。補助的な工作がなく、1歩、2歩が難しい場所もありますが、足を置く場所をわずかに移動するだけで安定することも多いです。
ルート上の難所の最たるものはキレットでしょう。キレットとは、尾根のコル(鞍部)のなかでもとくにV字状に深く切れ込んだ場所に名付けられています。北アルプスや八ヶ岳などにもあります。それらよりスケールや難易度は下がりますが、切り立った岩場を降りていくのは十分にスリリングです。万が一バランスを崩して落ちれば怪我では済まない場所ですので慎重に足を運びます。すれ違いにも注意して譲り合う精神も必要ですね。
比較的スムーズに進んでいましたが、8合目の岩峰あたりで渋滞となってしまいました。ここは滑りやすい岩場をトラバースや下降するので、どうしてもペースが落ちる場所です。筆者の後ろは関西弁が飛び交う、老若男女が混在する何やら楽しげなパーティーです。「滑りやすいから気をつけて」という声に「わしは滑り知らずや〜」などと軽快なトークが炸裂していました。吹き抜ける風が少々寒くなってきました。