■出町柳駅から下鴨神社へ

 京都御苑に沿って寺町通をさらに北へ。今出川通を右に曲がって河原町通を越えると賀茂大橋が「鴨川」に架かっている。橋の上流は「賀茂川」と高野川の合流地だ。

賀茂大橋から眺めた賀茂川(左)と高野川(右)の合流地

 なお、賀茂川の上流に鎮座する賀茂別雷(かもわけいかづちじ)神社の通称は「上賀茂神社」。賀茂川と高野川にはさまれた中州にある賀茂御祖(かもみおや)神社の通称は「下鴨神社」。この「賀茂」と「鴨」を間違えると、京都人から冷笑を向けられる恐れがあるのでご注意を。

 下鴨神社の正式な創建は不明だが、第10代崇神天皇7年(紀元前90年?)に神社の瑞垣修理の記録があることから、それ以前に建てられた可能性があるとする。祭神は玉依姫命と賀茂建角身命。その下鴨神社の最寄り駅が、鴨東線の終着駅である出町柳駅だ。

 出町柳駅から河合橋を渡って高野川を越え、北に進むと約5分で下鴨神社の一の鳥居に到着。ここから本殿まで続くのが糺(ただす)の森である。

賀茂御祖神社の石柱と一の鳥居
御蔭通から見た糺の森の様子

 糺の森は下鴨神社の南側に広がる原生林で、その広さは2万4000平方メートルと東京ドームの約3倍。しかし平安京が置かれた時代には、約495万平方メートルもの広さがあったとされる。

 森の中には小川が流れ、祭祀の遺構も発掘されている。女性の「美」に御利益がある河合神社などの摂社も鎮座。

河合神社の神門

 糺の森を抜けて二の鳥居を越え、朱色の楼門をくぐるころには、身も心も清められているような気分が満喫できる。

■人気のスポットだけじゃない京都の楽しみ方

 このように、京都の歴史をたどり歩ける鴨東線沿線だが、観光客やインバウンドの姿は、さほど多くはない。京都御所の中は観覧者で比較的混雑しているが、京都御苑は一般的な公園レベル。下鴨神社の参拝客も伏見稲荷や清水寺ほども多くなく、十分許容範囲である。

 「京都は人が多すぎて行くのがイヤ」という人も多いだろうが、余裕をもって観光が楽しめるスポットも少なくはない。場所によっては閑散としているところもある。しかし、そんな場所の神社仏閣に、ほかにはない特長があったり、何気なく建てられている街角の石碑が、とてつもなく由緒のある史跡だったりもする。

 人気のスポットもいいが、わざと外してみて裏めぐりをしてみる。それも京都観光の醍醐味なのだ。