■御嶽山が噴火し10年

 長野県と岐阜県の県境にある独立峰「御嶽山(おんたけさん)・標高3,067m」が噴火してから10年が経った。現在、愛知県に住む筆者にとっては最も近い3,000m級の山だ。

 あまりの悲しいニュースに、噴火後しばらくはショックだったが、登山道も徐々に規制が緩和され、今年の夏は王滝口から剣ヶ峰まで登れるようになり、徐々に以前のような活気が戻りつつある。

 とはいえ、御嶽山は火口500m以内を規制区域とし、現在も規制を行っている。登山前にしっかりと規制の確認を行い、入山して欲しい。

 御嶽山には主に日帰り可能な2つのルートがある。一番ポピュラーな南東方面から登る「王滝口」、東方面からロープウェイを経由して登る「黒沢口」だ。

 はるか昔、御嶽山は「特別な霊山」で、一般登山は許されなかったそうだ。江戸時代になり、一般の登拝を願う人が増え、まず黒沢口、次に王滝口が僧侶によって開かれ、一般登山が出来るようになったと聞く。

 今回は、霊山御嶽山が長く親しまれ、登拝されてきた2つのコースを紹介したい。

■黒沢口から御嶽山へ

おんたけロープウェイ飯森高原駅展望台からの御嶽山

 2022年8月下旬、筆者は友人と黒沢口から登山した。ロープウェイに乗り、「飯森高原駅」からしばらく「しらびその小径(こみち)」という整備された森を歩く。

 御嶽山は独立峰ながら3,000m級の火山で裾野が大変広く、裾野の先に広がる雲海の向こうに三大アルプスが見渡せるとあり、登山者以外も気軽に散策できるのが魅力の一つ。

 小さな子ども連れや軽装の旅行者がたくさん森林浴を楽しんでいた。小径が終わる行者小屋から先は本格的な登山道。こちらも日帰り装備で楽しそうに歩く数十名の登山者がいて賑やかだった。

 8合目、女性は引き返す場であった「女人堂」そばの結界である岩を通過し、御嶽山の聖域に入る。

御嶽山登山道には石像仏や鐘が至る所にある

 空海の像を見て鐘を鳴らし、登山を続ける。隅々まで整備が行き届いている印象で、山頂直下にシェルターや慰霊碑が設置されていた。

山頂直下に設置された慰霊碑

 山頂の剣ヶ峰まで登り、来た道を少し戻り、二ノ池山荘に寄った。噴火後に再建し、新しい木の匂いのする小屋に生まれ変わっていたが、噴火前の印象的だったグリーンの池は色がグリーンではなくなっていた。

二ノ池と二ノ池山荘

 筆者も含め、多くの登山者がヘルメットをかぶり、気を引き締めて登っている姿が印象的だった。

■王滝口から御嶽山へ 

王滝口登山口から見える堂々とした姿の御嶽山

 2024年9月中旬に筆者は王滝口から入山。鳥居をくぐると、御嶽山の山頂付近が神々しく見える。古くから信仰の山として親しまれてきた御嶽山らしい風景だ。

 八丁ダルミの平らな道から少しずつ傾斜が増していく。息が上がるが、丁寧に整備された登山道のおかげで思いのほか楽に登れる。9合目の避難小屋で視界がひらけた。大きな裾野の先に雲海が絨毯のようにたなびいており、その先に遠くアルプスなどの山々が見えた。 

9合目の石室避難小屋前から見た見事な雲海

 雲海を見た直後、残念ながら天気が急変の兆しを見せたため、大事を取って下山した。今年の夏は急に大量の雨が降るケースがあるので、いつもより慎重な決断をした。

■御嶽山ビジターセンター「やまテラス王滝」

やまテラス王滝外観

 下山後、王滝口駐車場付近に設立された御嶽山ビジターセンター「やまテラス王滝」を訪れた。登山者の休憩場所であり、御嶽山の自然や歴史についての展示、それらに加え、火山としての御嶽山の情報提供や展示がされていた。

美しく頑丈な展示室内部

 噴火の当時者である方々の話や展示物を見ていると切なくなり、決して忘れずに、また登山時は、より一層気を引き締めようと心に誓った。