■偶然の出会いで、目的地を急遽変更
石だらけの登山道を登り切り、室堂山の展望台への一本道へ出た。山頂から眺める立山カルデラの景色はどんなだろうと思いながら、道の脇に大きく広がった万年雪の川を眺めていると、後ろから、まるで近所のコンビニに行くかのような軽装の年配の男性が歩いてきた。リュックも持たず、手ぶらで軽々と歩いてきたおじさんに「どこから来たの?」と話しかけられ、それをきっかけに、イタリアと日本の山好き同士の会話が始まった。
話を聞くうち、どうやらそのおじさんは立山の山岳ガイドのようなお仕事をなさっている方だとわかった。我々がイタリアのアルプスに何度も足を運んでいると言うと、おじさんは「せっかくここまで来たんだから、室堂山じゃなくてあっちの浄土山に登ってごらん。こっちからは見られない立山連峰の向こう側の素晴らしい景色が見られるよ」とアドバイスしてくれた。しかし、「あっち」と指さされた方角には、氷河のような万年雪が横渡っている。
「あの、雪の中におっこちたりしません? 普通の登山靴で行けますかね?」と尋ねると、「大丈夫、大丈夫。ここを渡ってあの岩山登ればすぐだよ。40分もあれば着ける。最初は急勾配だけど、上に行けばあとはなだらかだから。簡単、カンタン」と言われた。どうしようかと話し合った結果、やはりプロがお勧めする風景をぜひ見てみたい! ということで、急遽目的地を変更して雪の中へ足を踏み出すこととなった。