■浄土山からの息を呑むような絶景に感激
山岳ガイドのおじさんに言われた「カンタン、簡単!」という言葉を信じて目指すことにした浄土山だったが、いきなり立ちはだかった岩の壁はかなりキツかった。最初だけ、だったはずの急勾配は延々と続き、ヤモリのように両手両足を使って這い上ること30分以上。ようやく最後の曲がり角の岩を踏み締めた時は息が上がっていた。
山頂へと続く登山道の手前に展望台のような広場があったので、そこで一休みすることにした。周囲には大小様々な山の陰影が広がり、その手前には真っ白な雪が輝いている。360度見渡す限り素晴らしい山々の勇姿が広がっていて、シャッターを切る手を休める暇もない。
たっぷり景色を眺めた後、腰を下ろして持参したおやつを味わう。ナッツ類と水とりんごがとてつもなく美味しく感じる。ひとしきり休んだところで再び周囲の景色を眺め歩いていると、相棒が突然、「見て見て! こっち! 海だ! 海が見える」と興奮気味に知らせに来た。よくよく目を凝らしてみると、なるほど山脈の向こう側に微かに海岸線が見える。
地図で確認したところ、富山湾のようだ。でも、なんでそんなに騒いでいるのだろう? と不思議に思って聞いてみると、「だって、こんなに高い場所にいるのに海が見えるんだぞ? イタリアのアルプスから海を見ることなんて絶対あり得ない。これはすごく珍しい光景だよ」と言った。なるほど、よくよく考えてみると山と海の距離が近いのは日本アルプスならではの光景なのだと理解できた。この目の前の景色は、この場所に立たなければ見ることができない。そう考えると、山登りがますます尊いものに思えてきた。



