■雲ノ平から高天原山荘へ
この日は雲ノ平山荘を通り抜け、高天原温泉に入り、温泉から10分の高天原山荘に宿泊する予定だった。
せっかく雲ノ平まで400mも登ったのに、また400m急降下して高天原へ向かう。日頃鍛えていたからこそ挑戦出来る山登りだ。
水晶岳の北西部に広がる、平らにくぼんだ「高天原」は紅葉が進みつつあった。誰も草刈りをしていないのにしっかりと刈られたように見える平原と、ぽつぽつと赤いナナカマド、クリスマスツリーのような針葉樹、遠くに黄葉が進んだ裾を広げる水晶岳。これだけ完璧に美しいのだから「美しく撮ってね」と風景が言っているようだ。上手に撮れなかったら自分の責任だと怯えながらシャッターを押した。
■満員御礼高天原温泉
シルバーウィークを利用し訪れたため、温泉も山荘も満員御礼状態であった。風呂もさっと浸かりすぐに出たし、山荘も3人で1つの布団。この日は玄関に泊る宿泊者もいた。筆者が訪れたのは山荘の建て替え前で、現在は宿泊可能数も増えたと聞いている。感激の高天原ではあったが、欲を言えば今度はゆっくりと泊れる日を選んで来ようと思った。
■薬師沢も赤く染まり
翌日雲ノ平へ登り、また薬師沢へ下りると、天気のよい空に赤い紅葉が映えて素晴らしい眺めだった。一日一日紅葉が進んで、赤さを増していくようだった。
この日は太郎平小屋に宿泊。日本酒を飲み空の星を眺めて、寒いなとすぐに小屋に戻った。私の住む関東平野はまだまだ暑いが、北アルプスはまだ昼間はポカポカしているものの、夜はキリっと冷えていた。この空気が美しい紅葉の風景をつくるのだなぁ、としみじみ思った。
■マイベスト3の雲ノ平一帯の紅葉
雲ノ平、高天原、薬師沢はそれぞれ違った紅葉を見せてくれると筆者は思った。里に近い紅葉や楓など雑木林の紅葉ではなく、紅葉している木と、それ以外の岩や山、針葉樹といった沢山の素材がつくりあげる、しみじみとした色の多彩な美だ。
そんなわけで、筆者は雲ノ平一帯の紅葉を過去に見た中で、ベスト3に選んでいる。
秋は日が短く雨が降るととても寒い。無理な山行は控えて、ダウンなど暖かい服などの用意をするのは当然のこと、日頃からしっかり体力をつけて登山してほしい。また登山口折立や薬師沢などは熊の生息地で、筆者も有峰湖で目撃したこともあるし、薬師沢で湯気の立つ熊のフンを見たこともある。熊鈴をつけて、複数での山行がより安全に繋がる。
数年がかりで鍛えて登るに十分値する山域だ。しっかり準備し、素晴らしい景色を見て来てほしい。
【折立から雲ノ平、高天原縦走コース】所要時間
1日目:折立 (0:00)→ 太郎平小屋 (4:00)
2日目:太郎平小屋(0:00)→薬師沢小屋(2:30) → 雲ノ平 (6:00) →高天原山荘(8:30)
3日目:高天原山荘(0:00)→雲ノ平 (3:30) →薬師沢小屋(6:10)→太郎平小屋 (8:40)
4日目:太郎平小屋(0:00)→ 折立 (3:10)
歩行距離: 約34.5km
累積標高差: 登り2,934m、下り 2,932m
合計所要時間:24時間20分