高山植物の写真を撮るために登山を始めて25年。カメラも35㎜から中判カメラへと大きくなり、夏山から雪山へチャレンジするなど、さまざまな山行を楽しんできた。そして、数々の失敗も重ねてきた。

 失敗と一言で言っても、未然に防げたものから災難まで多種多様だ。今回はそんな筆者の失敗談をまとめてみたので、今後の登山の参考にぜひ読んでみてほしい。

■失敗談その1 転倒! 木の根に目を強打し、しばらく行動不能

登山道に大きく張り出す木の根。このような根につまづいてしまった

 ある年の8月。5日間かけ北アルプス折立登山口から太郎平、薬師沢を経由し念願の雲ノ平、水晶岳へ登ったときのこと。

 水晶小屋に泊まり、折り返し4日目。雲ノ平から薬師沢へ降り小屋で昼食をとり、薬師沢を歩き太郎平小屋で1泊し、翌朝下山の予定であった。

 お盆の暑い時で、薬師沢は雲ノ平から標高を約400m下げる川沿いの湿地で、蒸し暑かった。川沿いを歩く道で、湿度が高いため木道が滑るなど危険が多い。気を付けて歩いているつもりではあったが、入山して4日目。疲れが溜まり、背負っている約20kgのカメラやレンズ、三脚などが重く感じ、意識ももうろうとしていた。

 突然木の根につまづき、目の前に迫る1本の木の根にしがみついた。一瞬ほっとしたのも束の間、直後に重いリュックが前方に大きく振れ、不運にもリュックの反動で、しがみついていた手は外れ、木の根に左目を強打してしまった。 

 起き上がり、心配する同行者を見た。しかし同行者の姿がわからない。打撲で眼球が動かない状態にあることに気づいた。目が見えない恐怖に正気を失いかける筆者に「少しゆっくりしよう」と同行者がなだめてくれた。

 目を閉じて数分後、急に眼球がくるくると動いた。同行者と2人で心からほっとした瞬間だった。

登山では無理は禁物。しっかりと休憩をとろう

■失敗談その2  暗闇の中、テントを追い出され事件

テント追い出され事件現場の荒川小屋テント場

 ある年の8月。4日間の日程で、筆者と男性2人の計3人で南アルプス荒川岳、赤石岳縦走登山を行ったときのことだ。

 男性2人にとって初めての南アルプスは思いのほか過酷で、2泊の予定を3泊に変更して荒川三山と赤石岳を楽しんだ。

 筆者は男性のうちの1人と交際を始めたばかり。まだ知り合って間もなかったため、お互いの性格もあまりよくわかっていなかった。

 2泊目の荒川小屋テント場で3人で夕食をとっていたときのこと。友人がテントに戻った途端に彼氏が「●●とすごく仲良くしゃべっていた」「彼氏としての立場がなかった」と言い出した。すると、話しながら腹が立ってきたのか、「あいつのテントで寝ろ」と追い出されてしまった。

 ヘッドライトも持たないまま、暗闇にひとりぼっちに。周りのテントも明かりを消していたため、自分の手すら見えなかった。性格上、謝るためにテントに戻らなかった筆者は、暗闇を歩き、誰かのテントにつまづいてしまった。辺りにこだまするテントの家主の叫び声。

 すると、彼氏がテントから出て来て筆者をテントに迎え入れてくれた。倒れてしまったテントの家主には本当に悪いことをした。漆黒の暗闇、やきもち焼きの彼氏、恐るべしだ。