■「伊那谷の飯島米」を使って3年目。米が真の名物と言えよう!
光岳小屋で提供するお米は、飯島町のお米を使っている。じつは私、以前、飯島町にある平屋のお家に住んでいた時期があった。人里離れたその家の周りは、大家さんの田んぼにぐるりと囲まれていた。天竜川と同じ高さにあるこの家は、陽が出るのも暮れるのも町よりひと足早かったけれど、ひっそりと静かで、私はここでの暮らしが気に入っていた。
ある日、駅前にある食堂に大家さんと食事に出かけたとき、その米のおいしさに驚いた。大家さんはちょっと照れくさそうに、でも得意そうな顔をして「うまいずら? これは俺の米なんだぞ」と呟いた。
小屋で1シーズン通して使うお米は、400kgほどだろうか。そんな大量のお米を用意するのは大家さん一人では難しいから、飯島町の田切農産にもお願いしている。
提供させてもらう他の食材も、ご縁で繋がっているものばかり。光岳でご飯を食べるときにはいつも、大家さんや田切農産の皆さん、伊那谷の広い空と、2つのアルプス、伊那谷で過ごしてお世話になったみんなの顔が浮かびます。
■豚汁定食はこうして生まれました!
夕飯の豚汁定食は、豚汁とご飯、紀州南高梅の蜂蜜漬けと日光の溜まり醤油の2種の漬物、小鉢にもちふの卵とじをよそって、パインフルーツの入ったゼリーを添えれば完成だ。お茶はもちろん、麓の川根本町のほうじ茶を淹れる。
あれもこれも、全部自分たちが食べておいしかったものを選びました。ヘリの荷上げは年一回。運べる重さは決まっているから、せっかく同じ重さならばおいしいものがいい。私も高橋くんも食いしん坊代表のような2人なので、自分たちで食べたいものを皆さんにお出ししている。
なぜ日光のお漬物かといえば、同じ「光」って字が入っていて縁起が良さそうだし、何度もお醤油につけているから日持ちもするのだ。そしてご飯が進むんだよな〜。
ちなみに、冬の間に日光に行った帰りに、益子で箸置きと漬物皿、豚汁用の器を探した。豚汁用の器は、「そういえば陶器ってすぐに冷めちゃうな」ってことを思い出して、木曽漆器にしました。漆器は樹脂のものより繊細でお手入れが必要だけれど、大切に長く使っていきたいと選んだ。
こうして、光岳小屋の豚汁定食は完成したのです。