立秋を過ぎ、標高の高いところではトンボが姿を見せている。しかし、まだまだ暑さは続きそうだ。さて、唐突だが「南岳」をご存知だろうか。長野県と岐阜県をまたがる北アルプスの南部に位置し、槍ヶ岳と北穂高岳の間の一峰である。一見、通過点の地味な山だが、3,000m級の高峰であり、百高山として知られている。
私の今年の夏休みは、上高地から、槍ヶ岳と北穂高岳の間にある「南岳」「中岳」「大喰岳」の百高山を目指すことに決めた。かなり体力の要する山であるが、楽しく行けたらと考えている。この日は「山の日」でもあり、上高地はかなり賑わいを見せていた。
■夏休みの洗礼を謹んで受けた
上高地には、沢渡バスターミナルからバスに乗って向かうが、沢渡駐車場に土曜日の午前3時頃に到着するも満車になりはじめ「駐車場合戦」が始まっていた。それでも仲間の協力があり、始発のバスに乗ることができた。夏にこの状態であれば、秋の行楽シーズンはもっと混雑するだろうと話題になった。また、関係者の話では今年一番の混雑となったそうだ。
翌日午後5時半の最終バスは、バス乗り場から小梨平ビジターセンターまで長蛇の列が続き、実際にバスに乗れたのは午後7時だった。その後も駐車場内も列を成し、道路に出ることも時間がかかるという洗礼を受けたのだ。全てを覚悟していこう。
■このルートの醍醐味
上高地を出発すると、槍沢ロッジまで5時間ほどの平坦な道が続くが、ここまでは木陰になっていて涼しく歩けた。槍沢ロッジから登りが始まり、日も高くなり直射日光でかなり体力を消耗した。暑いだけで大変だ。山道具の日傘をさしている人を見かけたが重宝するのだろう。水分補給をこまめにし、沢を見つければ手拭いを濡らして体を冷やしながら、ゆっくりゆっくり歩みを進めた。
このルートを選んだ一番の理由は、天狗池で「逆さ槍ヶ岳」を撮影することだった。氷河公園にある天狗池は窪地にあり、風の影響を受けにくく槍ヶ岳が映ることで有名である。到着したのは午後だったため、ガスが湧き上がり真っ白な雲の壁に遮られていた。それでもだんだん雲が動き、見え隠れする槍ヶ岳に翻弄されながら待機していた。その甲斐あってガスの合間から槍ヶ岳が現れる感動的な写真が撮れた。