数か月、数年かけて、少しずつ繋いで歩くのも楽しみ方の1つ

要所要所で太平洋が見下ろせるビューポイントも多い

 前述の通り、長距離自然歩道は環境省が路線の計画決定を行っていますが、整備や維持など、歩道の運営は主として各都道府県が管理を行ないます。

 そこで、東海自然歩道の情報提供・宣伝を担当している「東海自然歩道連絡協会」に、読者の皆さんにおすすめしたい自然歩道の歩き方を伺ってみました。

 「各地の自然歩道のコース沿いには、緑豊かな山々、清流などさまざまな自然景観を楽しむことができるだけでなく史跡や文化財、温泉などの見どころがたくさんあります。埋もれがちの貴重な文化財を探しながら、まずは身近なところから歩いていただくのはいかがでしょうか」

この農道も立派な東海自然歩道の一部

 全国各地で長距離トレイルの敷設や管理運営の支援をする「一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所」からは「一本に長く続く道なので、全線を通して歩くことにチャレンジしてみるのも良いと思います。数か月かけて一気に通しで歩くのも良いでし、数年かけて少しずつ繋いでいくのも良いと思います。歩く文化が盛んであるヨーロッパを中心に、日本人よりも多くの、全線踏破チャレンジをする利用者(スルーハイカー)が訪れています。日本でも少しずつですが、長く歩いて繋ぐ旅の魅力の認知が広がってきていると思います」との提案も。

各地域の味覚を補給するのは長く歩く旅ならではの楽しみ

 東海自然歩道の楽しみ方について伺うと、「角度を変えると表情が変わる富士山。山に上がると海が見えてくる島国ならではの景色。街の広がりの先にある、自然豊かな日本の風景。自然と交わり、街と交わり生きていく営み。そういった地域ごとに異なるものが、東京から大阪まで繋がっていく道であること。それが見えてくることが、東海自然歩道を歩く魅力の一部だと思います」とのお答えをいただきました。

地域ごとの文化の違いも体感しながら歩く

 たしかに地域ごとの違いは、じっくりと観察しないと気がつきづらい魅力でしょう。自分の足で歩く速度は、身近な自然や文化の魅力を再発見できるペースでもあるのです。コスパやタイパといった言葉がすっかり浸透するほど忙しない現代人こそ、今一度ゆっくりと歩くことで人間性を回復すべきなのかもしれません。

長い道中には渡渉箇所もあり

■長距離トレイルの今後の展開に注目

整った道だけでなく、こんなワイルドなパートもあります

 東海自然歩道の50周年を機に、全国の長距離自然歩道は改めて取り組み方を見直し、未来に向けて生まれ変わろうとしています。

 9月3日(火)には「ロングトレイルミーティング2024 〜みちのく潮風トレイルと東海自然歩道から日本の長く歩く旅のこれからを考える〜」が予定されており、東海自然歩道(長距離自然歩道)を含む国内各地の長距離トレイルの可能性を模索し、今後を考えるイベントとなります。長距離トレイルの今後の展開に興味がある方は、足を運んでみてください。

「ロングトレイルミーティング2024 〜みちのく潮風トレイルと東海自然歩道から日本の長く歩く旅のこれからを考える〜」

(参加は無料。応募締め切りは8月9日まで)

高尾山も、じつは東海自然歩道の一部。初めて歩くなら、高尾山〜相模湖まで12kmほどのパートもおすすめ

 車や電車に乗って遠くに出かける旅もいいものです。しかし、あなたの自宅のすぐそばにも、じつは長距離自然歩道が通っているかもしれません。もう少し涼しくなった休日には、ぜひ自宅の近くから自然の中をゆっくりと歩き始めてみてはいかがでしょうか。

●取材協力

環境省

http://www.env.go.jp/nature/nationalparks/pick-up/long-trail/

東海自然歩道連絡協会

http://www.tokai-walk.jp

トレイルブレイズハイキング研究所

https://trailblaze-hi.org