日本を代表するアウトドアブランドが数多く集まる新潟。昨年発足した、新潟県アウトドア協会(NOA)が2024年7月5日、三条市との包括連携協定を締結し記念講演を行った。NOAが目指そうとしているものは何か? 講演が行われた三条市立大学で取材した。
■アウトドアカルチャーの未来を新潟から始めよう
海と山、そして川と、それぞれの自然豊かなフィールドに恵まれる新潟は、一年を通じてアクティビティが楽しめるアウトドアの人気エリア。夏はキャンプや釣り、冬はスキーやスノーボードを楽しみに訪れるという人も多いことだろう。
日本ミシュランタイヤが7月4日に発表した日本全国のすぐれた宿泊施設を評価する「ミシュランキー 2024 in JAPAN」では、南魚沼市の「里山十帖」がキーを獲得。「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」(三条市)もリスト入りを果たし、アウトドアを感じさせる観光地としても国内外から注目を集めている。
モノ作りの面でも新潟は、江戸時代から始まった和釘の製造から発達した、高い技術を有する金属加工の集積地となり、その技術を土台にスノーピークやユニフレームなど、アウトドアのメジャーブランドが誕生。いまや燕三条ブランドのギアを使ったことのない人を探すほうが難しいほど普及しているのは御存知の通り。
そんなアウトドアに縁の深い土地である新潟で、様々なブランドや行政が連動できる仕組みとして、2023年11月に設立されたのが「新潟県アウトドア協会(NOA)」だ。
県内に本拠地を置く「スノーピーク」「キャプテンスタッグ(パール金属)」「ユニフレーム(新越ワークス)」「モチヅキ」「ベルモント」の5つのブランドが発起人となり、ガイド業(オフィスチッカほか)やキャンプ場(柏崎・夢の森公園ほか)など17社が参画する本協会。
アウトドアに関わる「ものづくり」「フィールド」「ガイド」の3つの会が設置され、県内で勉強会と情報交換会を兼ねた分科会を開催する。
その目的は、新潟県の地場産業や観光、行政の各部局が横断的に連携することで、アウトドア環境を活性化させること。くわえて、モノづくりとシステムの両面で“新潟モデル”とも呼べるネットワークを生み出し、新潟全体を活性化することにあるのだという。
三条市の滝沢亮市長と共に協定書にサインした、協会の代表理事を務める紫竹陽介氏は「新潟は日本最大のアウトドア産業の集積地です。地元メーカーが中心となり、主導するのは全国で初の試み」と挨拶。アウトドアを生かした観光の発展、災害時のアウトドア用具の活用などに官民一体となって取り組むと説明した。
■全国に広がるポテンシャルを持つNOAの挑戦
気になるのは、「NOAが具体的に何をするのか?」ということ。
具体的な施策について、紫竹代表理事は「環境や自然保護はもちろん、学びや教育、雇用の問題も含めいろいろな課題がある。今年(2024年)の目標はネットワークを構築し、具体案を取りまとめること。その先に未来を描いていきたいと考えています」と話した。
基調講演には協会顧問であるスノーピーク代表の山井太氏が登壇。65周年を迎えたスノーピークの歴史と連動するかのように発展した日本のアウトドアカルチャーを振り返り、「燕三条のブランドが信頼を勝ち得たのは、当協会の発起人5社をはじめ、大勢の方が真摯にモノ作りをしてきた努力の蓄積です」とこれまでの歩みを説明する。
NOAの今後について山井氏は「力を合わせて地域を輝かせることができれば、地球の未来だって変えられる。行政も共に動いてくれれば我々ブランドも無尽蔵の協力で応えるので、新潟の将来を輝かせる原動力になると信じています」とビジョンを披露した。
他の自治体との連携も視野に入れているというNOA。山井氏が「他の地域もうまく巻き込めば、5年程度で“日本アウトドア協会”に育つことも可能」とポテンシャルに期待する新潟県アウトドア協会が、今後の活動で生み出す“新潟モデル”に期待したい。