高山植物のなかには、限られた地域にしか生息していない「固有種」が存在する。これらの固有種は、美しい花を咲かせて登山者を魅了し、山の象徴として親しまれている。
ただし花を咲かせる時期や場所が限られているため、情報を得ていないと見逃してしまうこともあるだろう。そこで、東北の山々で見られる高山植物の固有種に焦点を当て、その咲く時期や場所についてご紹介する。東北の限られた場所でしか体験できない景色を見にいこう。
■岩木山に彩りを添える、紅紫色の可憐なミチノクコザクラ
青森県にある岩木山では、ミチノクコザクラと呼ばれる高山植物が咲く。ミチノクコザクラはハクサンコザクラの変種といわれ、ハクサンコザクラよりも一回り大きい。花期は、6月中旬から8月中旬頃にかけてで、紅紫色の花を咲かせる。ミチノクコザクラが咲く場所は、百沢コース上の大沢上部や種蒔苗代(たねまきなわしろ)付近だ。お花畑にはロープが張られているところがあるので、内側に入らないよう観察しよう。
▼岩木山登山マップ https://iwakisan.com/wp-content/uploads/2023/03/mtiwaki_clime_map.pdf
■早池峰山の岩礫地に咲く日本のエーデルワイス・ハヤチネウスユキソウ
岩手県に位置する早池峰山には、ハヤチネウスユキソウと呼ばれる花が咲く。ハヤチネウスユキソウはヨーロッパアルプスに咲くエーデルワイスに似ていることから、「日本のエーデルワイス」とも呼ばれている。綿毛をまとったような白い花をつける姿は、可憐さと高貴さを感じる。
ハヤチネウスユキソウの花期は、6月中旬から8月上旬頃。見られる場所は、早池峰山の標高1,400m以上の岩礫地や、やや乾燥した草地だ。
早池峰山に咲く高山植物の固有種は、ハヤチネウスユキソウのほかに、ナンブトウウチソウやナンブトラノオなどの珍しい植生が見られる。
▼早池峰山マップ https://www.kanko-hanamaki.ne.jp/imagem/files/1655254014_02.pdf
■足元に輝く白い星・チョウカイフスマと下向きに咲く赤紫色のチョウカイアザミ
鳥海山は、山形県と秋田県の境に位置する山だ。鳥海山には「チョウカイ」の名を冠するチョウカイフスマやチョウカイアザミといった固有種が咲く。チョウカイフスマは、白い花びらが5つに分かれた花をつける。荒涼とした地に凛と咲く姿は、まるで星のような美しさを放っている。チョウカイフスマの花期は、7月から8月頃で、鳥海山や外輪山(がいりんざん)などの山頂部で見られる。
またチョウカイアザミは、赤紫色の花が下向きにつくのが特徴だ。ほかのアザミよりも大きく、存在感がある。チョウカイアザミの花期は、7月から8月頃であり、鳥海山の八丁坂から七五三掛(しめかけ)、外輪山コース上で見られる。
▼鳥海山ガイドマップ https://yurihonjo-kanko.jp/wp-content/uploads/2020/03/75b6163bd09749348935f98d9cadec0b.pdf