5月の後半から6月にかけては新緑が深まり、さまざまな花が咲く時期となる。標高2,000m級の山々では残雪期の終わりが近づき、登山シーズンの幕開けとなる。今回は栃木県の那須岳を紹介したい。

■開山祭で本格的なシーズンの幕開け!  日本百名山「那須岳(なすだけ・標高1,915m)」

 栃木県の北部に位置する那須岳(なすだけ)では、5月8日に登山者の安全を祈願する神事「開山祭(かいざんさい)」が行われ、登山シーズンの幕開けとなった。

 那須岳は特定の山の名前ではなく、栃木県と福島県にまたがる山塊の総称で、「那須連山」や「那須連峰」と称されることもある。

朝日岳から望む那須岳の主峰・茶臼岳

 日本百名山の一座として名を連ねており、選出者である深田久弥は、「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ)」「三本槍岳(さんぼんやりだけ)」を定義している。那須岳はこのほかにも、関東百名山や栃木百名山、日本百霊山にも選定されている。

 今回紹介するのは那須岳の主峰とされている標高1,915mの茶臼岳の周回ルートだ。4時間ほどで駐車場まで戻って来られるコースを紹介したい。

茶臼岳の周回ルート(国土地理院地図より引用)

■峠の茶屋から目指す茶臼岳

峠の茶屋駐車場からは朝日岳がきれいに見える

 スタート地点となるのが「峠の茶屋駐車場」だ。無料で利用できる駐車場で、トイレも設置されている。ここから先、トイレはないので必ず済ませておこう。

 峠の茶屋駐車場の標高は1,462mで、麓と比べるとだいぶひんやりとしている。初夏とはいえ、朝晩は気温が低いので、防寒対策をしっかりとしたい。

 筆者が訪れたのは開山祭から2日後の5月10日だが、登山口にはうっすらと雪が残っていた。どうやら前日に雪が降ったようだ。

 例年なら降雪は4月上旬までで、5月の雪は珍しい。季節の移り変わりの時期は油断できないため、滑り止めの携行を忘れないようにしたい。

峠の茶屋登山口の鳥居。うっすらと雪が残っている

 スタート時の気温は5℃で歩き出しは寒かったが、登山口周辺には春を感じられる光景が広がっていた。

開花したばかりのミネザクラ。日本のサクラの原種のひとつで、高山に生育する

 登山口から10分ほどのところで「ミネザクラ」が開花していた。那須岳一帯では毎年5月〜6月にかけて咲く。別名「タカネザクラ」とも呼ばれている。

 登山口から50分ほどで「峰の茶屋跡避難小屋」に到着する。峰の茶屋跡避難小屋まで来るとあたりには木々がなく、見晴らしがいい。

赤い屋根の峰の茶屋跡避難小屋。ベンチもあるので休憩するのにぴったり

 峰の茶屋跡避難小屋から茶臼岳の山頂までは45分ほど。ここからは木々のない岩肌むき出しの登山道となり、強風が吹きやすい区間となる。風は体温を下げ、体力も奪うので強風時はウィンドシェルジャケットを着用してから山頂を目指したい。