本格的な登山シーズンが始まった山も増えてきた。しかし、場所によってはまだ残雪の残る山もあり、春は登れる山の選定が難しい。特に初心者や雪山経験がない人にとってはシビアになるところだろう。

 今回は残雪の時期が終わり、初夏に歩くのに気持ちのいい山を紹介したい。行動時間も短く、起伏も穏やかなので、体力面に不安のある人でも登りやすい初心者向けの山だ。

■『日本百名山』で「遊ぶ山」と称された「霧ヶ峰・車山」

 霧ヶ峰(きりがみね)は長野県の茅野市、諏訪市、諏訪郡下諏訪町にまたがる溶岩大地、八ヶ岳中信高原国定公園内にある。

 「霧ヶ峰」とはひとつの山の名前ではなく、車山をはじめとしたこの一帯の事を指している。最高峰は標高1,925mの車山(くるまやま)で、山頂には気象レーダー観測所や展望テラスがある。

車山の山頂に建つ気象レーダー観測所(撮影:山歩ヨウスケ)

 「日本百名山」の著書、深田久弥は作中で霧ヶ峰の事を「遊ぶ山」と称している。「登る山」は息を切らし、汗をかき、時間をかけて頂を目指すが、霧ヶ峰は「登る山」の登山とはちょっと違う。山なのでもちろん登りはあるが、起伏の緩やかな湿原が広がり、のんびりと景色を楽しみながら歩くことができる山なのだ。

一帯には起伏の穏やかな湿原が広がり、どこからでも遠くまで見渡すことができる(撮影:山歩ヨウスケ)

 余談だが、霧ヶ峰一帯には上昇気流があることから、1933年に日本で初めて「グライダー」が飛んだ場所としても知られている。

 それともうひとつ、「霧ヶ峰」はその過ごしやすい気候と環境からエアコンの名前にもなっている。三菱の霧ヶ峰エアコンは発売から50年以上経つロングセラーのエアコンだ。

■駐車場から45分! 湿原を歩きながら車山の山頂までハイキング

 今回紹介するのは「車山肩駐車場」からスタートし、湿原を歩いて山頂を目指すショートコースだ。最短ルートではないものの、八島湿原や白樺湖から車山山頂まではだいたい2時間ほどかかるが、紹介するコースは車山湿原を通り、45分ほどで車山に登頂できるコースだ。

木道が整備された湿原の中を歩く。背の高い木々が少なく、気持ちがいい(撮影:山歩ヨウスケ)

 車山湿原に入ると、両側が笹に覆われた木道になっている。樹々が少ないので、遠くまで見渡せ、「ザ・高原」を堪能することができる。

 湿原を歩くこと25分、車山乗越(くるまやまのっこし)に到着する。ここから少し急な区間となるが、山頂までは20分ほどなので、一気に山頂を目指そう。

車山乗越から山頂へと向かう途中。八ヶ岳の眺望が素晴らしい(撮影:山歩ヨウスケ)

 車山乗越から山頂まではゆっくり歩いて25分ほど。途中からスキー場のリフトと並走しながらの登りとなる。