宿泊が伴う山行や遠距離の移動はなかなかできない……。だから都市部から近く、そしてできるだけ有名な山に登りたい。ここではそんな欲求をかなえる日帰り可能な百名山の中から、比較的登りやすい山々を紹介しよう。

 ロープウェイやシャトルバスを使って標高を上げられて、整備された登山道で鎖場や岩場などが少なく、行程時間も5~6時間未満。それでいながら眺望抜群かつ、新緑や紅葉など四季の景色も美しい山をピックアップ。標高2,000~3,000mの山まで、それぞれ個性あふれる山を今年は歩こう。

●日本百名山とは?

 随筆家で登山家の深田久弥が、実際に登った山から選んだもの。それらは山岳紀行『日本百名山』に掲載されている。高い山だけが選ばれているわけではなく、山の歴史や個性、品格などを見て選定されている。100座制覇を目指す“百名山ハンター”と呼ばれる登山者もいるほど。

■霧ヶ峰(きりがみね)標高:1,925m【長野県】

歩行時間:4時間15分 
技術レベル:★☆☆☆☆ □体力レベル:★☆☆☆☆

 八ヶ岳中信高原国定公園の中心に位置する「霧ヶ峰」は、一帯の溶岩火山帯高原を指し、単独峰ではない。最高峰の車山(1,925m)を主峰に鷲ヶ峰(1,798m)、殿城山(1,800m)がなだらかな草原台地のうえにつづく穏やかな山系だ。

 一帯は登山道、トイレ、山小屋などの設備も整い、百名山の中でもアプローチしやすい山といえよう。霧ヶ峰登山はいくつもルートがあるが、車山高原スキー場のリフトを活用すると一気に頂上部まで上がれるのでオススメだ。百名山で最も楽に山頂に立てる山と言える。

 ただしこの山域はその名の通り、諏訪湖から運ばれてくる水蒸気を含んだ空気が冷やされ、霧が発生しやすい。日中の気候の変化には気を配り、濃霧に備え雨具の携行や滑りにくい靴を選ぶなどしておくのが安心だ。 

展望リフトを使えば麓から山頂までは20分ほどで到着する

 スキー場ベースよりリフト2基を乗り継ぐとリフト降車地点から5分とかからず車山山頂(1,925m)に到着。霧ヶ峰トレッキングはこの車山山頂を起点としたい。頂上部は360度のパノラマで晴天時の眺望は感動もの。

 頂上からその先の車山湿原、八島湿原を大きく見下ろせ、草原~湿原帯を外周するイメージだ。ルートを確認しながら緩やかな下りで蝶々深山へ。物見石を経て、八島湿原へ至る。天然記念物にも指定される湿原一帯は、ミズゴケを育み、季節によってレンゲツツジをはじめとするたくさんの花が楽しめる。

車山山頂から雲海の向こうに富士山、八ヶ岳を望む