筆者は登山を始めた時から雪山への憧れが強かった。夏の北アルプス「常念岳」や「唐松岳」などに登り、経験を積み重ねてきたが、真っ白な雪に覆われた山々の荘厳な風景はとても魅力的に思えた。

 今回は山登りを始めて4年になる筆者が、初めて雪山にチャレンジをした「八ヶ岳・硫黄岳」を紹介したい。

■八ヶ岳の中央に位置する硫黄岳(標高2,760m)

硫黄岳の山頂エリアは広く、360度パノラマが広がり、多くの登山者が景色を楽しんでいる

 八ヶ岳は一つの山の名前ではなく、山梨県と長野県にまたがる、およそ20峰の山々の総称である。北の蓼科山(たてしなやま)から南の編笠山(あみがさやま)までの南北25kmに連なる火山群で、八ヶ岳は日本百名山に選定されている。日本百名山で言う八ヶ岳は、最高峰の赤岳を筆頭とした南八ヶ岳のことを指す。

 夏沢峠を境に「南八ヶ岳」「北八ヶ岳」と呼ばれており、南八ヶ岳の最北にそびえる2,760mの山が硫黄岳(いおうだけ)だ。

■雪山デビューを硫黄岳にした理由

夏沢峠から山頂へと続く登山道。ケルンが山頂までの道標となってくれる

 筆者が初めての雪山に硫黄岳を選んだのは難易度と、行動時間が大きく影響している。急峻な岩場や鎖場などが多く続くようなルートは入門には向かない。また、夏山に比べコースタイムもより時間がかかることが多く、冬は日照時間も短いことから行動時間にも気を配らないといけない。

 今回筆者が紹介するルートは桜平ゲートから夏沢峠を経由し、硫黄岳を目指すルートだ。このルートは険しい箇所や道迷いの心配が少なく、比較的短い時間で登頂できることから硫黄岳を選んだ。

■桜平ゲートから夏沢鉱泉、オーレン小屋、夏沢峠を経て硫黄岳へ

桜平ゲート。ここまでは車が入れるが、4輪駆動車が望ましい

 登山口となる桜平にはゲート近くから「上」「中」「下」3つの駐車場が設けられており、いずれも無料で利用できる。

 ゲートから一番近い桜平「上」駐車場に駐車できればいいが、駐車台数が15台ほどと少ないので、すぐに満車になってしまう。おすすめは桜平「中」駐車場。60台ほど駐車できる広いスペースがあり、ゲートから600mほどで登山口から近いのもうれしい。

 なお、桜平「下」駐車場はゲートから3.5km離れているので、ここに駐車した場合は1.5時間ほど行動時間が増える。土日での登山を計画する際には、早めの行動をおすすめする。

 除雪車などが入れない未舗装の林道なので無理は禁物だが、桜平「中」の駐車場まで行くことができれば行動時間に余裕ができる。スタッドレスタイヤかチェーンの携行は必須だろう。

桜平「中」駐車場。広くて駐車しやすい

 桜平のゲートから最初のチェックポイントの「夏沢鉱泉(なつさわこうせん)」までは林道が続き、道幅が広く歩きやすい。夏沢鉱泉は通年営業の山小屋で、宿泊ができるほか入浴も可能だ(入浴料は税込み1000円)。

「夏沢鉱泉」桜平のゲートから40分ほどで到着することができる

 夏沢鉱泉までは林道なので軽アイゼンやチェーンスパイクで問題なく歩くことができるが、ここからはいよいよ登山道に入る。夏沢鉱泉でアイゼンに履き替えておくのがいいだろう。

 筆者はこれまで軽アイゼンで、丹沢や山梨県の竜ヶ岳などに登ったことはあるが、本格的なアイゼンは硫黄岳が初めてだった。アイゼンは雪山登山の安全確保において重要な装備。装着には慣れも必要なので、しっかりと装着できるように練習しておきたい。

雪が深くなってくるため、夏沢鉱泉からはアイゼンを装着

 夏沢鉱泉から夏沢峠までの所要時間は1時間30分ほど。途中、冬季封鎖された山小屋「オーレン小屋」を通過するがベンチなどが設置されており、夏沢峠までの中間地点にあたるため休憩するのにぴったりな場所だ。

オーレン小屋。冬季営業はしていないが、避難小屋として一部が解放されている