■山小屋利用の注意点

 イタリアの山小屋に宿泊する際は、相部屋のベッド利用でも個室でも、通常「シーツ持参」がルールとなっている。有料でタオルやシーツを貸してくれる施設や最初から備わっている山小屋も多くなってきたが、イタリアでは「山小屋に泊まるなら自分のシーツ、タオルはマスト」というのが暗黙の了解である。麓の村のスポーツ用品店には、最新式の超軽量・コンパクトなシーツ類を取りそろえているので、リュックに忍ばせておけば急な山小屋宿泊の時にも役に立つ。

シルクとコットン製の一人用携帯シーツ。超軽量で畳めば手のひらサイズになるため、常にリュックに入れておいても邪魔にならない

 山小屋宿泊の際にもう一つ気をつけたいのが、部屋・ベッドのタイプとともに食事を何回分にするかを選ぶ、ということ。これによって、利用料金が大幅に変わってくる。食事は「Pensione Completa/ペンシオーネ・コンプレータ」が昼食(もしくは翌日のランチ)・夕食・翌日の朝食の3食分がつく、という意味で、利用日の夕方に到着したのであれば、昼食分を翌日のランチ用のパニーノに変更してもらうこともできる。

 「Mezza Pensione/メッザ・ペンシオーネ」は夕食と朝食の2食付き。翌日分のランチはないので、その事を考慮して翌日のプランを考える必要がある。もちろん、料金を払えばお弁当用のパニーノを作ってもらことは可能。「Solo pernottamento/ ソロ・ペルノッタメント」は素泊まりの意味で食事は一切つかない。

 山小屋の料理はたいていジビエ肉の煮込みやサラミ、チーズとパン、トマトソースのパスタなどシンプルなものが多いが、ボリュームは満点。村のレストランのようにメニューが豊富にあるわけではないので、食事の好き嫌いがある人は夕食を用意して行った方がいいかもしれない。

山小屋メシの一例。サラミとチーズ、パンは定番メニュー
猪肉、鹿肉などジビエ肉の煮込みも山小屋の夕食お決まりメニューだ

■山小屋宿泊の魅力

 アルプス初心者にはハードルが高そうな印象がある山小屋宿泊だが、実際にはどの山小屋でもあらゆる登山客を快く迎え入れてくれるので心配する必要はない。山小屋には世界中からの登山愛好家が集まってくるので、そうした人々とゆっくり交流できる夜の時間はとても楽しい。

 少しづつ陽が落ち、山陰がどんどん濃くなっていく様を眺めたり、水飲みに集まってきた野生動物を間近で観察したり、部屋の窓から降るような星空を見上げたり。大自然のど真ん中に身をおいて、その息吹に抱かれる時間を過ごせることも、山小屋宿泊の醍醐味と言えるだろう。小さな子ども連れのファミリーからプロのアルピニストまで、誰でも分け隔てなく歓迎してくれるイタリア・アルプスの山小屋でのひと時を、ぜひとも体験してみて欲しい。

ジャグジーやプールも完備した山小屋など、リゾート仕様の施設も増えてきた。どんな過ごし方でもリラックスできることは間違いない