下山後に飲むビールは格別である。筆者は夏のアルプスで山小屋泊をすると、目的が登山なのか山でビールを飲むことなのか、わからなくなるくらいの無類のビール好きである。しかし冬になるとアルプスの多くの山小屋が営業終了し、山に泊まるチャンスが少なく車での日帰り登山が多くなる。そうなると自宅に到着するまでビールはお預けだ。
電車でアクセスのよい山を考えたとき、街にも近い六甲山系の山に登る関西在住の登山者は多い。しかし、たまにはほかの山域の山にも登ってみたい。
そこで今回おすすめするのが、滋賀県にある猪子山(いのこやま)〜繖山(きぬがさやま)の縦走ルートである。登山歴9年の筆者が、下山後のビールまで楽しめるこの縦走ルートと魅力を存分に紹介する。
■猪子山〜繖山がおすすめの理由5つ
電車で行く登山のデメリットは下山後に泥が付いた靴や服、汗びっしょりの姿で電車に乗らなければならないことだ。着替えを持っていくという手もあるが、その分背中の荷物は重くなる。その点、冬の猪子山〜繖山縦走はそこまで汗をかかずに手軽に楽しめる山なのだ。そのほか筆者のおすすめポイントを5つにまとめてみた。
●1. アクセスが良い
JR京都駅から東海道・山陽本線「米原行」の新快速電車に乗ると、猪子山の最寄り駅「能登川駅(のとがわえき)」まで42分でアクセスできる。さらに駅から登山口までは徒歩10分ほどである。
●2. 低山だが、小刻みにアップダウンがあり登りごたえがある
猪子山の標高は約268m、繖山は約433m。そのほか縦走路にはいくつかのピークがあり、小さなアップダウンを繰り返すため、低山ながら登りごたえがある。登山道は整備され道標も多く歩きやすい。また冬でも積雪の心配が少ない。
●3. 低山なのに眺望がよい
繖山には戦国時代、山城が築かれていた。山城は「地の利」を生かして建てられることが多いだけに、縦走路からの見晴らしや眺めがよい。ルート上に展望ポイントがいくつも設けられ、空気が澄んだ冬の晴れた日には縦走路から琵琶湖や鈴鹿山系がよく見える。
●4. 歴史を感じられる
縦走路は「巨石の神々を訪ねる道」として地元民にも愛されている。山中には「岩船」と呼ばれる巨石や古墳、神社などが多数ある。登山道に設置された案内板に目を通しながら歩くと歴史が感じられ、より深く山を知れるのも面白い。
●5. 汗をかきにくい
夏場に標高200~400mの山に登ると暑さで熱中症にもなりかねないが、冬だと寒過ぎず暑過ぎずちょうど良い。天気が安定している冬の暖かい日に登るのがおすすめの山である。