平野部でも随分と冷え込むようになってきた。冬の始まりは大型の寒気が訪れるたびに大雪の知らせが届く。雪国ではスキー場がオープンし、雪山の季節のはじまりだ。
ハイカーにとっては登れる山が限定されてしまうため少し寂しくもあるが、冬にこそ登ってみたくなる山がある。ここではそんな貴重な山を紹介する。
■都心から1時間、丹沢「仏果山」
仏果山(ぶっかさん)は、標高747mの山だ。丹沢山地の東部に位置し、神奈川県愛甲郡愛川町と愛甲郡清川村の境界に位置する。標高こそ高くはないが、登りごたえのある山だ。仏果山のとなりの高取山(たかとりやま)や宮ヶ瀬にかけてのハイキングコースもあり、短時間での登頂もできることから初心者から上級者まで訪れる。
仏果山を登るルートは大きく3つあるが、今回は北側に位置する半原(はんばら)から登るルートを紹介する。日当たりの悪い北側の斜面は外気温が低く氷点下になることも珍しくない。ここで冬の時期ならではといえる「白い花」を見ることができる。
■シソ科「シモバシラ」に咲く「霜柱の花」
氷点下まで冷え込んだ冬の朝、仏果山の北側斜面の登山道に鮮やかな白い花が咲き乱れる。シソ科の「シモバシラ」は多年草であり、9〜10月に白い花を咲かせる。冬になると地上部は枯れてしまうが、根から吸い上げられた水分が地上部の枯れた茎から染み出して氷点下の外気に触れて氷の結晶となる。それがいくつもの層になって「氷の花」となる。シモバシラの名前は「霜柱」をつけることが由来となっている。シモバシラにできる「霜柱の花」は、仏果山では冬の時期にしかみることのできない風物詩となっている。
■霜柱の花を楽しみながら急登を登る
霜柱の花は歩く人を楽しませてくれ、カメラに収めるために足が止まることが多くなるが、山頂まで急登が続くのでゆっくりと進みたい。
登山道はほとんどが樹林帯の中だが、途中に展望ポイントがあり、平野を見渡すことができる。
仏果山登山口から1時間30分〜2時間ほどで山頂にたどり着く。山頂は樹林帯で見晴らしがよくないが、展望台が設置されており、展望台からは東丹沢の山々や関東平野を一望できる。
霜柱の花が咲く仏果山は寒さが厳しいほど楽しみが増える山だ。凍結や防寒への対策をしっかりとして、特に寒い日に出かけてみてほしい。
【登山ルート】(所要時間)
仏果山登山口⇒(50分)⇒展望ポイント⇒(45分)⇒仏果山⇒(30分)⇒展望ポイント⇒(35分)⇒仏果山登山口
【アクセス】
圏央道、相模原ICから国道412号経由で15分(9.5km)
※車でアクセスする場合、駐車場は神奈川県立あいかわ公園を利用。平日は無料だが土日祝は有料(普通車500円)あいかわ公園から仏果山登山口までの往復の所要時間は約2時間15分