突然、さくら(仮名)が「アルプスに登りたい」と言い出した。筆者が毎年夏にアルプス登山に行くので連れて行ってほしいと言うのだ。さくらは筆者の姪で、高校3年生、受験真っ只中であるのだが、少しの間勉強から離れたい、美しい景色を見たいというのだ。さくらが従妹である筆者の娘のひまり(仮名)に一緒に山に登ろうと提案し、娘もふたつ返事で承諾した。
こうして2023年7月の夏休みに、現役女子高生2人とさくらの母である筆者の妹と母娘4人で北アルプスの女王「燕岳(つばくろだけ)」へ1泊2日のデトックス登山に行くことになった。登山届に悪戦苦闘し、合戦尾根で防衛大学校の登山訓練を目の当たりにし、燕山荘(えんざんそう)では書をしたため、彼女たちはご来光に感動した。
そして、ついに燕岳に登頂し、登山の「プロ」に出会う。女子高生が思う登山の「プロ」とは?
■高山植物の女王コマクサに導かれ、ついに「燕岳」登頂
ご来光のあと朝食をすませ、快晴の中、燕岳へ出かけた。燕山荘から燕岳までは往復約1時間の道のりである。登山道脇のロープで保護された場所に、ピンク色をしたコマクサが群生していた。コマクサは高山植物の女王と呼ばれ、花の形が馬の顔に見えることから駒草と呼ばれている。登山道脇のコマクサを見ながら、砂や小石の混じる滑りやすいザレた登山道を燕岳へ登っていく。途中にはメガネ岩やイルカ岩と呼ばれる巨石もそびえ立つ。
午前6時30分、ついに現役女子高生の2人は燕岳、2,763.0mの山頂に立った。そこは360度の眺望で、名前のわからない美しい北アルプスの山々の絶景に彼女たちは感動していた。まさに昨日、燕山荘でさくらが筆でしたためた言葉どおりの景色が、目の前に広がっている。
■下山時にまさかの出会い!
燕岳をあとにし、燕山荘に戻り、デポしていた荷物をピックアップして午前7時30分、名残惜しいが下山を開始する。燕山荘からの最後の絶景を目に焼き付けて、下山を開始しようとしたときに、雷鳥が現れてくれた。
雷鳥とは、神聖な鳥として古来敬われている鳥で、一部の高山のみに生息しており、環境の変化に敏感なため、絶滅危惧種となっている。一羽の雷鳥が燕山荘のテント場をちょこちょこと歩いており、さくらとひまりは初めて見る雷鳥の姿にくぎ付けである。2人は忍び足で近づいて、雷鳥の姿をスマホにおさめた。