■【その2】秋は熊の活動が盛んな時期

群馬県の妙義山白雲山(標高1,104m)登山口では「熊の目撃情報」を掲示して、登山者に注意を促している
尾瀬・鳩待峠から山の鼻に向かう途中にある、クマよけの鐘
群馬県の赤城山の鍋割山山頂付近での熊目撃情報(情報提供:上州くん安全・安心メール) 

 秋はクマの活動が盛んになる。冬眠に備えて大量の栄養を蓄える必要があるため、11月下旬の冬眠に入る時期までクマの活動は続く。この夏は各地で熊の出没が報告されたが、秋はますます注意が必要だ。

 SNSを見ていてもクマに遭遇したという報告をよく目にする。2023年9月23日には、「赤城山の鍋割山(標高1,332m)の山頂付近でクマを見かけた」という警察からの情報メールが届いた。その日は祝日の土曜日で、山頂には登山者が複数いたかもしれない。

 なお、「上州くん安全・安心メール」は登録すれば誰でも配信を受け取ることが可能な群馬県警察からのEメールだが、登山者向けというわけではない。不審者情報、事件発生・検挙情報などの一つとして、県内各地の熊出没情報も毎日のように送られてくる。

登録は、以下のURLから可能。
http://www.police.pref.gunma.jp/28879.html

 環境省自然環境局が令和3年に発行した「クマ類の出没対応マニュアル」によると、クマ対策としては、

・熊よけの鈴やラジオをつける
・複数で入山し、話をしながら歩く
・熊撃退スプレーを持参する
・熊に出くわしてしまったら、背中を見せて走って逃げるのではなく、熊を見ながらゆっくり後退する
・至近距離で突発的に遭遇してしまったら、両腕で顔面や頭部を覆い、直ちにうつぶせになる

参考:環境省自然環境局「クマ類の出没対応マニュアル」https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/

 などが紹介されている。熊撃退スプレーはいざというときにすぐ使えないと意味がないので、事前の練習が重要だそうだ。ローカルな低山は登山者が少ないので、クマに対する注意も重要だ。

■【その3】秋は日暮れが早い!  低山でも装備はしっかりと

ダウンジャケット、ヘッドランプ、予備のスマートフォン、地図、コンパス、熊鈴、非常食はチョコレートと 羊羹、エマージェンシーブランケット、ファーストエイドキット

 低山を歩いていると、他の登山者のバックパックがとても気になる。荷物が少なすぎる人が多いのだ。昼食と飲み物しか入っていないだろうと思われる、小さなバックパックを背負っている登山者をよく目にする。天気がいいからと、車にレインウエアを置いていこうとする友人もいた(もちろん、説得してバックパックに入れさせた)。

 秋の登山は、低山でも防寒対策は必須だ。標高が100m上がると気温は0.6℃下がるといわれるが、実際には頂上は風が強く体感温度はさらに低くなる。歩行中は暑いくらいでも休憩時は重ね着したくなることも。

 ハードシェルやレインウエアだけでは寒い場合もあるので、薄手のフリースかライトダウンもあるとよい。筆者はフリースジャケットは行動時も寒さに応じて着用し、ダウンジャケットは休憩時に着用している。

 ヘッドランプとファーストエイドキット、非常食、予備の水も必要だ。日帰りの予定であっても、道に迷ったり、けがをしたりすれば予定通りに下山できないこともある。低山だからといって、救助がすぐ来るとは限らない。山の中は携帯の電波も通じない。秋は日が暮れるのが早い。山間ではなおさら暗くなるのが早いので注意が必要だ。また、低山には避難小屋などもない。

 コンパスと紙の地図もお守りと思って持っていこう。スマホの登山アプリがあれば紙の地図はいらないという人も多いが、今年9月に岡山で遭難死された方はご遺体発見現場とスマホが発見された場所が2㎞も離れていたという。スマホを落として道に迷い、遭難死するリスクもある。筆者は故障などに備えて、予備のスマホも持っていくようにしている。

 低山でも滑落や転倒・骨折、道迷い、熊との遭遇などさまざまなリスクがある。仮に片道2時間なら手ぶらで大丈夫などと考えず、低山でも甘く見ないで登山の装備をしっかり整えて登ろう。

 筆者がよく登る群馬県の小沢岳(標高1,089m)は、鎖もロープもない静かなハイキングコースだが、2015年11月には遭難死亡事故が起きている。道迷いによる滑落らしい。落ち葉で登山道を見誤ったのかもしれない。

 天候が悪いときに登らないのはもちろんだが、秋の低山登山は甘く見ないことが大切だ。