あれほど暑く長かった夏が嘘のように寒くなってきましたね。いよいよ秋本番ですが、北アルプスの山々では例年より遅い紅葉の色づきを待たずに稜線がすっかり雪化粧してしまいました。

 この季節、高い山へ本格的な登山をするのは大変ですが、ハイキング程度、もしくはドライブがてらにダイナミックな山の絶景を見たい! そんな人におすすめなのが、長野県北部の西側(大北地域)にある小熊山(おぐまやま)です。

■車道と登山道が交差する! “歩きたいところだけ”トレッキングが可能な小熊山

木崎湖の畔からの林道入り口部分。舗装はされていますが凸凹があり、狭くカーブが多いですのでスピードを抑えて慎重に

 小熊山は五竜岳方面から延びてくる山陵の末端部、標高1,303mの小ピークです。一帯の西には鹿島槍ヶ岳や爺ヶ岳などの北アルプス名峰が連なり、東には仁科三湖の一つ、木崎湖が水を湛えています。

標高1,170m地点のトレイル入り口。こういった標識が随所にあり、歩きたいところだけ山道をトレッキングすることができます(ただし駐車スペースは限られています)

 登山道もありますが、車道・小熊山林道(12月1日から通行止め)が麓から山頂部を縦断するように走っているので、実は歩かなくても絶景を楽しむことができます。地形図を見て「この部分歩きたいな」と感じた場所だけ“つまみ喰い”のようにトレッキングが可能で、一番短い箇所(1,170m)だと、15〜20分ほど歩くだけで山頂に到着します。

■秋の爽やかな風を感じながらの森歩き

小熊山山頂。木崎湖への下りは急で落ち葉で滑りやすいのでご注意ください

 山頂は三角点と標識がなければ山頂とは名ばかりのわずかな盛り上がりで、視界も特段良いわけではありません。しかし、緑から黄色へと様々な色合いが混じり合うカラフルな森、そこに少ないですが赤い紅葉がアクセントになっていて目を楽しませてくれるので、歩いていて飽きることがありません。(真面目に)下から上がってくると急坂もありますが、乾いた爽やかな風が抜けてくれるのでそれほど苦にならないのはこの時期ならではでしょう。

 樹間から垣間見える木崎湖の青い輝きを視界の隅に捉えながら、落ち葉のトレイルを踏み締めるたび、カサカサと乾いた音が耳心地よく響き足運びも軽快です。森を抜ける風とともに、紅葉した葉がひらひら舞い落ちていきます。「四季があって良かった!」そうしみじみと感じながら森歩きを楽しむことができます。

万が一の遭遇に備え、素早く対応できるような位置に熊撃退スプレーを装着しておきます

 かなり手軽に楽しむことができるトレッキングですが、注意したいのは名前からもわかるようにクマが多いようです。僕は幾度も訪れていますが、この山でクマに出会ったことはありませんが、“熊鈴”と“カウンターアソルト(熊撃退スプレー)”は常に携行しています。

 木々はかなり葉を落とし視界は開けていますが、落ち葉が林床を覆っていますので、この季節特有の道迷いのしやすさもあります。タイミングによっては車道も落ち葉に覆われていますので、路肩の溝に落ちないように気をつけてくださいね。